NHKの最大の強みは?

NHKは公平な負担という大義名分で受信料の徴収を進めているが、視聴者が支払わない理由の大部分は「支払うメリットが見当たらない」というものだ。確かに、NetflixやYouTubeなどの動画配信サービスはNHKの受信料とほぼ変わらず、広告なしで視聴することができる。

動画配信サービスは好きなコンテンツを選べるという点において、タイパ重視時代に沿ったサービスだ。NHKのデジタル版も番組を選ぶことはできるものの、放送から1週間から2週間程度で消失してしまう。

NHKが最も強みを出せるのは、速報性の高いジャーナリズムだ。経営計画に盛り込んだコンテンツ戦略6つの柱の一つが「“フェイク”の時代だからこそ顔の見える信頼のジャーナリズム」だった。NHKは受信料引き下げに伴う減収に対応できるよう、ごっそりと経費を削った。大胆な構造改革の中で、骨太のジャーナリズムを維持しなければならない。

4月13日の「NHKスペシャル」にて、財務省の国債企画課に密着するドキュメンタリー番組が放送された。日本の国債発行残高が1100兆円にものぼる一方、日銀は買い入れを控える方針を掲げている。厳しい状況の中、財務省の職員が中東の投資会社などとハードな交渉を重ねるというものだ。

「国債発行で消費税の引き下げは可能」などと野党の一部は喧伝するが、現場では日本国債の売り先に苦慮する姿が映し出されていた。巨額の国債を発行することのリスクを改めて浮き彫りにしたのだ。こうした番組を制作できるのも、公共放送たるNHKならではのものだ。

受信料の徴収方法にばかり目がいきがちだが、コンテンツの磨き上げとそれを国民に広く認知させる活動こそが重要になるはずだ。

取材・文/不破聡