セキュリティが堅牢なタワマン勢を切り崩す策とは?

NHKは2023年4月に受信料割増金制度を導入した。「支払いを拒否する世帯に対して、2倍の受信料を求める」というものだ。すでにNHKは複数の世帯に対して提訴しており、東京の世帯では6万8000円、大阪の世帯では11万6640円の支払いを命じるという判決が出ている。

提訴された多くの世帯は契約締結と受信料の支払いに応じ、和解による幕引きを図っているようだ。「受信料2倍」という強力な武器を手にしたNHKが、「新たな営業アプローチ」に邁進している様子がわかる。

次に狙いうちされそうな世帯が、タワーマンションに住みながら支払いを拒否する層だ。2025年4月9日の参議院決算委員会で公明党の新妻秀規議員が、タワマンなどのマンションにおける契約締結割合が低調になっていることを問題視した。


NHK受信料の徴収のネックとなっているタワマン勢 (写真AC)

NHK受信料の徴収のネックとなっているタワマン勢 (写真AC)

これに対し、NHKの小池英夫専務理事は「マンションの分譲事業者などを通した受信契約のお願いも効果的だ」とし、対応を進めていると回答したのだ。

タワーマンションはセキュリティが厳しく、訪問による契約がとりづらかった。小池専務理事の回答から見えてくるのは、マンションの販売会社や管理組合などを通して、契約締結する方法の模索だ。

NHKはこれまでタワマン居住者に対して不動産登記情報などのデータを活用し、ダイレクトメールを送付するなど古典的な手を打ってきたが、今後は分譲事業者と手を組むことで、契約率が上がる可能性は高い。

 テレビを持たない人も徴収の対象に?

受信料の支払いで、長年課題になっていたのが国民の「テレビ離れ」だ。特に若者は深刻で、アンテナ工事サービスのアンテナドクターによる10~20代の若者調査では、2割近くの世帯がテレビをまったく見ないと回答している。そのうち、約4割は家にテレビがないという。

テレビがお茶の間の中心にある時代は去り、今やオールドメディアなどと呼ばれる始末だ。若者のテレビ離れが進むのも時代の流れとしては当然だ。

NHKは2025年10月にインターネットを通じた番組配信が義務付けられ、これに伴ってネット配信の受信料を新たに設けた。

地上契約と同じ月額1100円を視聴者から徴収し、初年度の2025年下半期は1.2万件、2026年度に2.4万件の契約を見込んでいる。これでテレビを持たない層も徴収の対象にしたわけだ。中長期的に見れば当然の措置だと言えるだろう。

ただし、これは然るべき手続きを経て契約を締結するもので、テレビを持たずにスマホを持つ人に対して強制的に徴収するものではない。Netflixなどの動画配信サービスと同じような位置づけである。

NetflixがNHKの競合に… (写真/shutterstock)
NetflixがNHKの競合に… (写真/shutterstock)

つまり、テレビ離れが進む潮流の中で、NHKは中長期的にコンテンツ力で国民を魅了し続けなければならないことになる。それなくして健全な組織を永続的に支えることはできないのだ。