更年期障害は常に頭の芯に汗をかいている感覚
その後、2021年には職場での嫌がらせを受けたことから精神的に不安定になり、食べては吐き、眠れない日々を過ごす時期もあった。2023年からは更年期障害にも悩まされている。
「それ以来、頭の芯が汗をかいているような感覚になることが多く、絶好調だと思える日はほとんどありませんね。そういう意味では、この年になっても競技を続けることは若い人にはない苦労が多いかもしれません」
それでも、彼女はレジェンドとして結果を残し続け、コツコツとトレーニングを積み重ねていくことの大事さを体現している。一時期はバーを持つこともできなくなるほど衰えたスクワットの重量は、今ではオフシーズンでも120キロまで上げるという。
「でも、120キロのラックアウト(バーをラックから外す動作)って、私にとって生きるか死ぬかみたいなギリギリの瞬間。余計なことなんて考えられない。脚やお尻を鍛えられる種目は他にもありますけど、その感覚が味わえるのはスクワットだけ。
だから、更年期障害や心や体の不調で悩んでる人はスクワットをやってみるのもいいかもしれませんね」
彼女自身、数々の困難を乗り越えられた要因は「間違いなくビキニ競技のおかげだと思います」と断言する。
体を鍛えることは心を鍛えること。長瀬さんの競技人生を見ていると、現代人こそハートビルディングが必要なのではないかと思えてくる。
取材・文/武松佑季
撮影/下城英悟