編集部は毎日徹夜続き…
「最初見つけたときは僕も思わず興奮してしまいましたが、今はちゃんとした絵がみなさんの手元に届けばいいなと思っています」
そう理解を示す青山さん。その背景には、制作過程の段階で感じていた違和感があった。
「編集部の方とやり取りする中で『毎日徹夜続きで…』と多忙を極めているようでした。普通は1年がかりでもおかしくない作業工程を、半年ほどで仕上げていました。万博にどんな展示物が並ぶのかしばらくは分からない状態だったので…」
公式ガイドブックの制作については協会の公募があり、JTBパブリッシングが審査を通過したのは昨年7月。そこからガイドブックの制作が開始され、空飛ぶ車など展示物の細かい資料が青山さんのもとに届いたのが昨年11月末。それをもとに未来都市をイメージしたイラスト制作に取り掛かり、約1カ月半ほどでイラストを完成させた。
「イラストの締め切りが迫ると普通、編集部から催促が来るんですけど、その問い合わせもなかったので、アップアップだったのではないでしょうか。僕自身も制作しながら『万博はそれほど大きなイベントなんだな』とも思っていました」
青山さんは早稲田大学理工学部を卒業し、同大学院に進学したのち、建築事務所に就職。30歳で絵本作家として独立した。これまでの経験を活かし、家やマンションなどの建造物や街の風景・群衆画を得意とし、70年大阪万博のイラストを描いたこともあった。
今回の完成版イラストへのこだわりを聞いてみると、
「お子さんが見て感情移入してもらえるように、街や家も丁寧に描きましたが、そこで過ごす人々が少しでも楽しく見えるように細かな動作や表情にもこだわりました。70年万博の絵も図面をもとに描かせてもらっていたので、今回仕事の依頼をいただいたときは、『また万博に関われるんだ』と、とてもうれしかったんです」
そう笑顔で語る青山さん。改めて、まもなく開幕を迎える大阪・関西万博への思いを聞いた。
「始まる前の失敗やゴタゴタを忘れさせてくれるぐらいの大成功を収めてほしいです。だってせっかく万博に関わったんですから、後世の人に『あの万博に関わったんだ!すごい!』って言われたいじゃないですか。みなさんが『行ってよかった』って思えるような、未来に希望を持てるイベントになってほしいです」
取材・文・撮影/木下未希