タイミー営業のメリットとデメリット
ではタイミー営業にはどんなメリットやデメリットがあるのか。まずは雇用主側についてはどうなのだろうか。
「雇用主にとってはデメリットの方が大きいといえるでしょう。例えば、接客業を行う企業がタイミーを使って採用した人物が、勝手に顧客に自社のサービスと関係のない営業行為をすれば、それはその企業にとって顧客の信用を失いかねない危険な行為であり、大変迷惑なわけです。
そして、業務時間中に営業行為をされた場合、その営業行為に費やされた時間は、純粋な労働時間として含まれません。例えば8時間労働の契約でも、営業行為に30分費やされたとすると、雇った企業側から見れば7時間半しか働いていないことになるのです。
デメリットが大きい一方、メリットがあるとすれば、人手不足が深刻な企業であれば、就業先での営業行為をオープンに容認する姿勢を見せることで、その企業の求人に多くの応募が見込めるかもしれません。しかし、人手不足のために労働者に営業の機会を提供する企業は少ないでしょう」
では、タイミー営業を行う被雇用者にとってはどんなメリットがあるのか。
「メリットとしてはやはり本業の仕事の売り上げを獲得するチャンスが増えるということが挙げられます。また本業の営業目的としてだけではなく、マーケティング目的でもスポットワークを活用できるでしょう。
取引企業や競合企業に潜入して市場調査をすることで、自社の商品を改善するための情報を収集したり、営業方針を学ぶ機会になったりするわけです。このように、自身の学びのためにスポットワークを活用するというメリットもあるのではないでしょうか」
このケースとしては、冒頭で紹介した「いちご農家が市場調査のためにタイミーを使ってスイーツ工場を回っている」というXのポストが当てはまるだろう。
しかし川上氏は、他人に迷惑をかけるような身勝手な営業行為を働くことは自身のデメリットにつながると指摘する。
「多くの企業では服務規律が定められており、労働にきちんと従事することを約束し、労働内容と関係のない行為を行うことは原則禁止されています。
もし就業先に事前に申告せず、勝手に営業行為を働けば、服務規律の違反となり、雇ってもらった企業からの信用を失うことになります。
最悪企業から損害賠償請求されることも考えられますので、こうした“騙し討ち営業”はすべきではないでしょう」