どうなる日韓関係? 

3つ目の気になる点は今後の日韓関係だ。

もし、弾劾が棄却されて尹大統領が復職すれば、これまで通りに日韓関係は平穏を保つだろう。また、尹大統領が罷免され、その代わりに出馬した与党系候補が当選した時も日韓関係は維持される。

問題は李代表が大統領になった時だ。李代表は反日的と評価されることがしばしばで、日本では李当選となれば、ふたたび徴用工問題などで日韓関係が悪化するという予測が多い。

だが、私自身は日本の人々が心配するほど、日韓関係は悪化しないだろうと予想している。今年に入り、李代表が「理念と陣営は(国民に)飯を食わせない。脱理念、脱陣営の現実的な実用主義が危機克服と経済成長に必要」と、実用主義を強調し始めたからだ。

この実用主義は日韓関係にも適用され、李代表はその後、ことあるごとに「現在の良好な日韓関係を維持する」、「日本の防衛力増強は韓国の脅威にならない」などと発言し、対日スタンスの変更を表明している。

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ほぼ時期を同じくして、李代表自らが所属する最大野党・民主党の立ち位置を「保守中道」と定義したことも見逃せない。大統領選での中道票取り込みを意識した動きだが、その結果は上々で、中間層の61%が「野党への政権交代を望む」と、「与党の政権維持を望む」28%を大きく上回る状況となっている(韓国ギャラップ3月4~5日調べ)。

現在、与党「国民の力」は保守結集を急ぐあまり、憲法裁判所解体などを叫ぶ極右勢力の集会に積極的に顔を出して共闘を表明するなど、本来の保守ポジションから極右ポジションへと自党の立ち位置を移動させつつある。

そのため、ぽっかりと空白地帯となった穏健保守層の票田を「実用主義」と「保守中道」の2つの宣言で取り込もうという李代表の作戦が功を奏した形だ。

李代表にとって、この2つの宣言は大統領選の主要な公約となる。当然、李代表は新大統領になっても公約した実用主義の適用となる現在の良好な日韓関係を維持するはずだ。

次の総選挙が3年後に控えていることを考えると、少なくとも5年ある任期前半の2年ほどは公約スタンスを変えて日韓関係を悪化させることはないだろう。

取材・文/姜誠