カギを握る中道層 

尹大統領・弾劾審判「8対0の全員一致で罷免」か、それとも「サプライズ棄却」か…国論二分の韓国で「宣告後に起こること」_3

仮に、もし尹大統領が罷免となれば、60日以内に次の大統領を決める選挙が実施されることになる。そこで2つ目の気になる行方――。だれが次期大統領になるのだろう?

最新の世論調査で圧倒的に支持を受けているのは進歩系野党の民主党・李在明(リ・ジェミョン)代表だ。ほとんどの調査で40%を超える支持を集めており、しかもじりじりと上昇している。現状では次期大統領レースのトップを走る本命馬といえるだろう。

対抗馬は保守系与党「国民の力」の支持を受ける金文洙(キム・ムンス)雇用労働部長官だ。彼は20%近い支持率(3月初旬・韓国ギャラップ調べ)を集めており、韓東勲前「国民の力」代表(8.4%)、洪準杓(ホン・ジュンピョ)大邱市長(6.4%)、呉世勲(オ・セフン)ソウル市長(6.2%)といった保守系の有力候補を頭ひとつリードしている。

このまま推移すれば、次期韓国大統領選は進歩系・李在明氏、保守系・金文洙氏の一騎打ちとなりそうだ。

とはいえ、ふたりとも一定のリスクを抱えている。李代表は「司法リスク」、金長官は「極右リスク」だ。

李代表は現在、4つの裁判を抱えており、3月26日にはそのひとつ(公職選挙法違反容疑・1審有罪)の第2審判決が控えている。2審も有罪となれば、大統領候補としての適格性を問われかねない。支持率急落もありうる。

一方の金長官は国会議員3期、京畿道知事2期を務めた実績を持つが、「右翼中の右翼」と呼ばれるほど右派的性向が強烈で、これまでにも「(左派の)文在寅大統領は銃殺対象」などと発言するなど、たびたび物議をかもしてきた。今回の12・3戒厳についても徹底支持の姿勢で一貫している。

韓国大統領選は保守支持層30%、革新支持層30%とされる、いわゆる岩盤支持層は固定的で、残り40%の中間層の票の奪い合いで勝敗が決まる。あまりに右に偏った金長官では勝利のカギをにぎるこの中間層の票を取りこぼす恐れがあるのだ。

前回大統領選での尹錫悦大統領と2位で落選した李在明代表の票差はわずか0.7ポイント差、票数にして25万票ほどだった。金長官の極右性向に嫌気がさした中間層が数パーセントでも進歩系候補支持へと流れれば、保守陣営の当選はおぼつかない。

あくまでも弾劾成立が前提だが、次期大統領選は李代表の「司法リスク」、金長官の「極右リスク」の最小化をテーマに両陣営が激しく競い合う展開となるだろう。