会社の85%以上は初任給25万円未満
今年の春闘の結果、ユニクロなどを展開するファーストリテイリングは初任給を3万円引き上げて33万円に。ゲームソフト大手のカプコンは6万5000円引き上げて30万円に。「すき家」などを展開するゼンショーホールディングスは、来月入社する大卒社員の初任給を3万4000円増額し、31万2000円にするとそれぞれ発表した。
しかし、これらはほんの一部で、ほかにも続々と名だたる大手企業が賃上げを実行している。2025年春入社の新入社員の初任給アップが話題になっているが、2026年春入社組の初任給をさらにアップさせると発表している企業も出ており、こうした流れはこの先もしばらく続いていくと見られる。
これだけ見ると羽振りがよく、今の大学生たちをうらやむ声が多く上がっているが、これらは一部の大企業だけとの指摘もある。
株式会社帝国データバンクが2025年4月入社の新卒社員に支給する初任給について1519社にアンケート調査をしたところ、初任給「30万円以上」と答えた会社は確かに増えているが、全体でみると前年より1.5%アップの1.7%。「20万~25万円未満」の企業の割合が62.1%で最も高く、「20万円未満」と答えた会社も24.8%ある。つまり85%以上の会社は初任給「25万円未満」なのだ。
大企業が賃上げをすることで人手を募っているように、日本全体は今、人手不足の問題に直面している。しかし、中小企業は大企業ほど賃上げを行なう余裕はなく、“賃上げ疲れ”という言葉も出ている。
こうした流れのなか、中小企業は今どんな問題を抱えているのか。日本総合研究所、調査部長の石川智久氏に話を聞いた。
「多くの大企業が賃上げを進めており、賃上げできない中小企業は人材確保に苦労する状況が続いています。もちろん、中小企業側も賃上げ以外のメリットを提供することで優秀な人材を確保するなどの工夫をしていますが、足元で物価上昇が続く中では、給料の高い会社を志望する人が増える傾向が強くなっています」(石川智久氏、以下同)