生徒を泣かせても…! 

平林さんは、「鬼のマナー講師」とも呼ばれ、厳しい指導が特徴だ。叱責により生徒が涙を流すこともある。この指導方針は平林さん自身にとっても決して容易なものではないという。

「褒める仕事は、指導する側も楽だし、教わる側も気持ちがいいものです。でも叱る仕事は双方がツライ。でも、厳しさがあってこそ成長できると信じているので、私がその役割を担わなければならないと考えています。

それに叱るということは、相手によくなってほしいという想いがあるからこそです。他人の子どもに対して、親は声を荒げませんから。私は幼いころ、叔母さんも叔父さんも、多少遠慮があり、心から叱ってくれていないと感じていました。

お稽古に通っていたときは、本気で叱ってくれる先生がいましたし、できるだけ厳しい指導をしてくれる先生を探していました」

平林さんが指導を行う様子
平林さんが指導を行う様子
すべての画像を見る

伝統的なマナーと異なる考えを提唱することや、厳しく叱ることへの批判は避けるのは難しい。心が傷つくこともあるという平林さんだが、それでも指導を続ける理由がある。

「私は墓場まで持っていかないといけない経験もしたし、いつ死んでも不思議ではない人生を送ってきました。生きていられるのは、生かされているからだと感じているんですよね。育ててくださった方々への恩返しはもちろんですが、私にできることは、時代に即したマナーを提案していくこと。これこそが私の使命だと、感じています」

 取材・文/福永太郎