大学にも行けず高卒で就職
高校卒業後は、経済的な事情もあり兵庫県内の信用金庫へ就職することになった。大学に行けない悔しさをバネに、大学生に負けないだけの教養を身につけようと決意。
給料の7〜8割を月謝にあてるほど、熱心に稽古事に取り組んだ。
給与の大半を注ぎ込んで通った習い事で様々な教養を身につけ、27歳でエレガント・マナースクールを設立。企業研修の講師として活躍し、「都に頼めば売り上げが伸びる」という評判を呼んだ。
2009年に出演したテレビ番組で伝説のマナー講師として紹介され、その厳しい指導の様子が話題を呼び、現在までのメディア出演につながっている。
平林さんが指導しているのは、一般的な「マナー」ではない。「接遇」という人に好かれ、指名される技術だ。
「接遇に秀でている人は、特別なアクセサリーや服で着飾らなくても、品性があると思っていただける。一般的なマナーに人を引き付ける技術を加えることで、さりげなく差をつける雰囲気づくりができるのです。たとえば、Zoomで会議をするときに笑顔を見せたり、相槌を打ったりするのはマナーではないですが、好感を持てますよね」
接遇はビジネスにおいても、「この人から買いたい」という信頼関係の構築につながる。接遇という概念自体は一般的だが、平林さんの指導する「接遇」は、自身の人生経験から生み出された独自の技術と解釈にもとづいている。
「幼いころ、電柱に隠れていて、近所のおじいさんが坂道で自転車を押していらっしゃるのを見かけると、後ろから押してあげていたんです。そうすると早く上がれたからとお小遣いをくださるんですよね。
私は人並みのお小遣いや食べ物をいただきたくて、どうしたら人に好かれ、喜んでもらえるかを考えながら生活していました。その中で、身につけた技術は、接遇の原点になっています」