俺と話したことない人が俺のことを信奉してる状態って、いびつじゃないですか?
──海外移住では言語の壁にぶち当たって塞ぎ込むという話を聞きますが、小袋さんはいかがでしたか。
小袋成彬(以下同) 言語力のなさを痛感することはあれど、塞ぎ込むことはなかったです。カフェの店員と少しずつ話せるようになったとか、今日はこの言い回しができたとか、友だちが言ってることが今まで以上に理解できるようになったとか、少しずつレベルがあがっていくのが楽しかった。
小さな積み重ねが自己肯定感にもつながっていった気がします。
──短い期間ではあるものの、仮想通貨での投資も楽しんでいたとか。
のほほんと生きてたら危ない。制作費は稼がないと。
ずいぶん昔に買ったイーサリアムが知らない間に高騰してたので、仮想通貨バブルを感じて「じゃあ自分のポートフォリオにいれておこう」みたいな(笑)。
自分は資産家になりたいとか、音楽でめちゃくちゃ稼ぎたいという欲はないんですけど、割と安定した中で不安定を楽しみたいタイプなので。とはいえ、儲けたかったらもっと頻繁にアルバムをリリースして、ライブをたくさんやってると思います。
──移住してからは毎週ジャズ・セッションに参加しては楽器を演奏していたそうですね。歌は歌わず……?
無理ですよ(笑)。英語が難しいのもあるけど、日本語でも嫌かも。バーではみんながオープンマイクで歌ってるんですけど、自分のキャラではない。周りが盛り上がってるのを聴くのは好きだけど、歌うのはちょっと......正直、ステージも好きじゃないです。
──ライブ、好きじゃないんですか。
やれば楽しいし得意な方だと思いますけれど、居心地の悪さを覚える瞬間がある。
例えば「この歌声は、多くの苦難を乗り越えたが故に出るものだ」みたいな眼差しを向けられると、「そんなことないんだけどな」と思っちゃう。
俺もディアンジェロの音楽は好きだけど、ディアンジェロと話したことないし、どんな人間なのかはわからない。音楽が好きなのはわかるし嬉しいけれど、それが個人に対する感情と結びつくのは違うかなと。俺と会ったことない人が俺のことを好きになったり嫌いになったりするのって、不思議な状態じゃないですか?
そう言いながら、最近は「アルバム作ったから聴いてね、ライブやるから来てよ」と発言してるんですけどね。我ながら相当勝手だと思います。