人間には凸と凹がある
でも、いつまでも「私なんか」を繰り返す人に、誰がついてくるでしょうか。ある程度の年齢になったら「かわいいの先」にある「責任」と「自信」を身につけるべきだと、私は思っています。
人は傲慢な態度をとっていれば、周囲から反発をくらい、たたかれます。でも謙遜が過ぎるというのも考えもの。「とんでもない、私なんか」は、相手の「そんなことないですよ」を強要するとても面倒な言葉にもとられます。
そして、自分を出さずに人の陰に隠れた生き方をしていると、それは顔つきや姿勢にもだんだん表れてくるのです。
「人間には凸と凹がある」と教えてくれたのは、私の人生の大先輩である鯨岡阿美子さんです。鯨岡さんは、ファッション業界の女性リーダーを中心とした、国際的な非営利団体「ザ・ファッショングループ」を日本で立ち上げたジャーナリストで、いわば戦後ファッション業界の草分け的存在。
1970年代には、ニューヨークを皮切りに全米で行われた、日米文化交流のためのファッションイベント「ジャパン・ショウ」を陣頭指揮されました。私はその準備にかかわらせていただきました。
あるとき私は鯨岡さんに猛烈な勢いで怒られたことがあります。
私は化粧品会社という組織の人間なので、打ち合わせの場でも会議の場でも、とにかくメモをとる癖がありました。物覚えが悪い人間であることは自覚していたので、耳で聞き、手で書き、覚えるということを実践していたのです。
ザ・ファッショングループの会議でも、私は毎回細かくメモをとっていました。会議に出席しているのは、ファッション業界で著名な方ばかり。その中のおひとりが私に名刺を渡して、あとでそのメモ内容を自分のところに送るようおっしゃいました。
私は「はい、わかりました」と素直に名刺を受け取りました。その私の姿を見て、鯨岡さんがあとでこう言いました。