次に日本が「買わされる」輸送機は
2023年8月には静岡県沖を飛行していた陸自オスプレイの機内で予防着陸を促すランプが点灯、航空自衛隊静浜基地に緊急着陸するということもあった。調べたところ、ナセル内に金属片が発生しており、飛行を続けていれば、屋久島沖で墜落した米空軍オスプレイと同じ事態になりかねなかった。修理が終わり、オスプレイが木更津駐屯地へ戻ったのは同年10月になっていた。
政府は災害派遣での活用を喧伝するが、整地された場所にしか離着陸できず、地面が荒れた被災地での運用には向かない。熊本地震では安倍政権の要請で米海兵隊のオスプレイ2機が運動公園に降りたが、能登半島地震では飛行停止になっていたこともあり、1機の飛来もなかった。
軍部が暴走した先の大戦の反省から、日本は政治が軍事を統制するシビリアン・コントロールを採用している。しかし、武器の選定にまで口を出し、危険で効率の悪いオスプレイを導入したのは明らかにシビリアン・コントロールのはき違えだ。
今年2月にあった日米首脳会談では日本側の予想に反してトランプ大統領から具体的な要求はなかった。石破茂首相が対米投資を1兆ドル(約151兆円)に増やし、懸案だった日本製鉄によるUSスチールの買収も投資と言い換える朝貢外交に徹したこともあって、波風が立つことなく終わった。
だが、首脳会談後の共同声明には、岸田文雄政権で決めた防衛費を2027年度までに倍増する強化策が書かれ、続いて「米国は(略)2027年度より後も抜本的に防衛力を強化していくことに対する日本のコミットメントを歓迎した」とある。さらなる防衛費の増加を日本側が米側に約束したと読み取れる。
米軍はオスプレイの欠点を克服したとされる垂直離着陸輸送機「V280バロー」を開発し、陸軍や海兵隊で導入を開始する。
次には共同声明の約束通り、日本がトランプ氏から「V280バローを買え」と迫られ、またまた政治主導による米製兵器の調達が行なわれるのだろうか。
取材・文/半田滋 サムネイル写真/共同通信