「プレイの後ですね」
突然の依頼にも関わらず快く取材を受けてくれたのは、関東の某県で小児科医として働く、医者のSさん(50代)だ。
※
──まりてんさんとは、知り合ってどのくらいでしょうか?
S(以下同) 7年くらいですね。
──最初の出会いは?
その頃、まりてんさんは池袋で風俗店の店長兼キャストをやっていて。面白い子がいるなと思って、予約して会いに行きました。少し話しただけで、「お医者さんですか?」と職業を当てられたことが、印象に残ってますね。
──今では、どのくらいの頻度でまりてんさんと会ってるんですか?
まりてんさんが失踪して精神科病棟に入ってしまったときや、コロナ禍のときは会えてないのですが、コロナ禍が明けてからは1か月に1度くらいの頻度で会ってます。整体とか美容院に行くみたいな感覚ですね。
──まりてんさんの、どんなところが魅力的ですか?
なんでも開けっぴろげに話してくれるのがいいですね。それが演技なのか素なのかもよくわからない。だからこそ、こちらも話しやすいですね。
──普段、まわりに話しやすい人はいないのでしょうか?
医者という職業柄、プライベートでも医者として相談されたりすることが多くて。リラックスして話せる人ってなかなかいないですね。
──たとえば、今日は2人でどんなお話をしてたんですか?
今日は発達障害についての話をしていました。
──それはどんな話でしょうか。
お互い発達障害みたいなとこあるよねって。なにを持って障害とするかって話はあるんですけど。
“標準偏差”ってわかりますか? 標準偏差で言うと、だいたい100人いたら上の2~3人と下の2~3人を2SDって言うんですけど。検査でも2SD超えると異常値だって言うんですよね。
医者ってたぶん、学校で100人いたら成績がトップ1~3番目くらいじゃないですか。そう考えると医者って2SD超えの集まりだし、まりてんさんも風俗嬢で全国No.1になってるから、業界の中で2SD超えてるから異常者だよね、みたいな話をしてましたね。
──なるほど。そういった話は、プレイの前に話すのでしょうか。
プレイの後ですね。
──つまり、今のは全部ピロートークでの話だったんですね。
そうですね。
※
小児科医という職業柄か、それとも、プレイの後という状況からか、Sさんは凛とした表情で穏やかにインタビューに答えてくれた。
インタビューを終えて喫茶店を出ると、時刻は13時だった。歌舞伎町のラブホテルで17時スタートの次のお客さんと会うまで、まりてんさんは一度自宅に帰るということだった。
※
──家に帰ってお昼ごはんを食べるのでしょうか?
まりてん(以下同) 出勤中はご飯を食べないようにしてます。もしお客さんがご飯を振る舞ってくれることになったときに、一緒に食べれるようにしておきたいので。
──では、家に帰ってなにをするのでしょうか?
YouTubeの動画のサムネ作成や、ファンクラブの月1イベントの準備などをしてきます。また17時に歌舞伎町のホテル前で会いましょう!
※
そう言葉を残すと、まりてんさんは目の前でタクシーに乗りこみ、颯爽と帰宅していった。
#2に続く
取材・文・撮影/山下素童
〈プロフィール〉
まりてん
1990年愛知県生まれ。妹が亡くなった影響で母親が新興宗教に入信したことで、娯楽や交際が制約されていた、いわゆる「宗教2世」。2009年、美術大学のデザイン学部へ進学。大学4年生の冬にデリバリー・ヘルス店に入店し、3ヵ月キャストとして勤める。2013年、美術大学を卒業し、広告制作会社にWEBデザイナーとして就職。3年半で退社。2016年、25歳の時に激戦区東京・池袋にて風俗店を立ち上げる。池袋西口ホテル街を中心にデリバリー・ヘルスを運営。2019年3月、経営のストレスから自殺未遂。休養後に大手事業会社に中途社員として就職し、WEBプランナーを務める。2020年より風俗嬢に復帰し、傍らYouTubeチャンネル『ホンクレch‐本指になってくれますか?‐』を開設。現在登録者23万人突破。