一番大事な持ち物は?

リビングでそんな会話をしていると、自宅近くに、まりてんさんが所属するデリバリーヘルス店の送迎車が到着した。1人目のお客さんが待つ五反田のラブホテルまで向かうとのことで、送迎車に同乗させてもらうことにした。

送迎者に乗ると、まりてんさんがダウンコートからスマホを取り出した。画面を覗かせてもらうと、自身のYouTubeの過去動画をスマホのアプリで切り抜き、Xにその動画を投稿しているようだった。

──移動中はゆっくりしないんですか?

移動中とお風呂に入ってる時間は、SNSの更新をするって決めているんです。

──LINEも返信されているんですね。今から会うお客さんとの連絡ですか?

3人目に会うお客さんからLINEが来てて。今、京都駅から新幹線で東京に向かって来るらしいです(笑)。

1人目のお客さんが待つ五反田のホテルに向かう車内で、3人目と4人目のお客さんと連絡を取るまりてんさん
1人目のお客さんが待つ五反田のホテルに向かう車内で、3人目と4人目のお客さんと連絡を取るまりてんさん

──お会いする前からLINEでやりとりもするんですね。

そうですね。あと、新規のお客さんにリマインドの連絡も送ってます。

──なるほど。ちなみに、カバンの中の持ち物はなんですか?

持ち物は、化粧ポーチとお釣りのお金くらいですね。

──もっといろいろあるのかと思いましたが、意外と身軽なんですね。

一番大事な持ち物は、心ですよ(笑)。

そんなやりとりをしているうちに、送迎車が五反田のラブホテル前に到着した。送迎車から降りると、「じゃっ、いってきま~す!」と軽い足取りで、まりてんさんは1人目のお客さんが待つラブホテルの中へと消えていった。

朝10時の五反田のラブホテル。足取り軽く入ってゆく
朝10時の五反田のラブホテル。足取り軽く入ってゆく

まりてんさんがお客さんと過ごす120分の間、近くの喫茶店で待機することにした。11時50分を過ぎたころ、「そろそろ出ます!」とまりてんさんからLINEが届いた。急いでラブホテルのほうへ戻ると、まりてんさんとお客さんがラブホテルから出てすぐのところに佇んでいた。

「やばいことが判明したんですけど! 私、予約の管理を間違えてて。13時に浅草で会うと思ってたお客さんの予約が、本当は1ヶ月先でした(笑)。だから、めっちゃ暇になっちゃいました(笑)」

こうした予約の管理ミスは珍しいことだそうだ。思わぬ時間ができたので、今プレイを終えたばかりのお客さんにインタビューができないかお願いすると、快諾してくれた。まりてんさんと120分間どのように過ごしていたのか。また、まりてんさんのどこに惹かれているのか。近くの喫茶店に入り、話を伺うことにした。