「運に自分を任せるのに疲れていた」

小説の発表、そしてマンガ化という結果を残したことは、これまで続けてきた芸能界の仕事への向き合い方にも変化が生まれた。

「芸能の仕事にすがりつかなくなったんです。それしかないから、すがるじゃないですか。今でも、仕事はいっぱい欲しいと貪欲に思っています。

でも、演技やバラエティのお仕事って、時の運だったり、なにかの事情だったり、誰かの気分だったりで変わるもの。

選んでもらうために、例えば細かいことで言うと、体重管理だったり、食べ物に気をつけたり、規則正しい生活を続けて待つわけじゃないですか。

でも、そういう運に自分を任せるのに疲れていた部分があったんです。

正直あまりよくないですけどね、こういうことを言うのは。お仕事をいただいてる側なので。

でも、やっぱり仕事を待つだけだと、飢えるんですよね、心が。だから、それも緩和したかったんだと思う。すがらないように」

『週刊明星』1987年9月10日号より (撮影/横谷弘文)
『週刊明星』1987年9月10日号より (撮影/横谷弘文)

芸能活動と執筆活動という2軸を得た今の状況について、「すごくバランスが良くなった」と分析する。

「かっこつけた言いかたですけど、小説は生み出すことなので、楽しいだけじゃなくてね、いまだにやっぱり吐くような思いなんですよ。言葉探してね、心を濁す澱(おり)みたいなものを出して、正常化というか、バランスをとっているので。

今でも主演女優になりたい、トップ女優になりたいって夢を描くわけですよ。でも、それをずっと待っていても、もう私には無理って思ったりしてる自分もいる。

でも、小説を書いて、マンガを発信することで、これまでの私とは違う面も取材していただけるわけじゃないですか。そうすると、また嬉しくなっちゃうでしょ(笑)」

今年はデビュー40周年、来年はソロデビュー40周年。過去に自分が行なってきた人生の選択については「後悔の塊」と表現する国生だが、この先の展望については目を輝かせながら夢を語る。

「ちょっとダサいこと言っていい?(笑)

まず、執筆では成熟したものが書けるようになりたい。『国守の愛』についてはマンガ化という夢を1つ叶えたので、次はアニメ化、実写化。それは演者としてじゃなく、地に足のついたプロデューサーとして、現場に携わりたい。

『国守の愛』のマンガを世界配信もしたいですね。なんで縦読みを選んだかっていうと、セリフを入れ替えるだけで世界に配信できるからなんですよ。

そして、引っ張りだこのタレントさんになりたい(笑)。

自分の中で、本線はやっぱり芸能なんです。芸能、芸能、芸能っていう状況では視野が狭くなるし、苦しくなるので、軽やかに笑顔で楽しく取り組むためにも、1人でもんもんと文字を積み重ねていくことにも取り組んでいきたい 。

今さら、売れたいとか、何を言ってるの?って話ですけど、やっぱり売れたいな(笑)」

#1はこちら

国生さゆりが手がける『国守の愛~群青の人・ イエーガー~』
国生さゆりが手がける『国守の愛~群青の人・ イエーガー~』
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取材・文/羽田健治