国生さゆりが筆をとった理由

国生が、小説を初めて世に発表したのは2021年。小説投稿サイト「小説家になろう」に、本名である國生さゆり名義で長編SF小説「国守の愛」シリーズを投稿した。

「書き始めたのは、コロナ禍でした。突然、先が読めない毎日で、みなさん1人になったじゃないですか。そんなとき、私は性格上、自分と向き合うんですよ。いつも『なんで』とか『どうして』と思っちゃうんです。

孤独な毎日のなかで、そんなことを自分のなかに落とし込んでいたときに、国生さゆりというタレントに恩返しというか、『国生さゆりにはこういう一面もあったんだ』ってなにか残しておきたいと思ったんです」

国生といえば、バラエティ番組『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)などで見せた、物怖じしない強いキャラクターを思い出す人も多いだろう。

「私は好きなことしてね、好きなように遊ぶというか、振る舞っていたっていうイメージを持つ人もいると思うんです。

でも、人にはいろんな面がある。私もただ好きなところにふらふらと飛んでいって、何かをやって傷ついて、帰ってきただけの人じゃない。傷つくところは傷ついて、考えるところは考えて、反省もしている。

心のうちにはいろんな面があったから、小説のような作品が残せるようになっていたんだねっていうふうに思ってほしかったんです」

『週刊明星』1986年9月25日号より (撮影/横谷弘文)
『週刊明星』1986年9月25日号より (撮影/横谷弘文)
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だが、当初は自身で小説を書こうとは思っていなかった。

「最初から、小説を自分で書きますみたいなことじゃなくて、コンテみたいな感じで、自分の思いを書きためていたんです。

それを基にライターさんだったり、脚本家さんだったり、随筆家の方だったりにお任せしようと思っていました。

でも、人に熱く思いを伝えたい性格なので、書きためたものがいつの間にかすごい量になってしまい、自分でやることにしました(笑)」

国生にとって、執筆は未知の世界。「文章で伝えることがもどかしく、泣きながら書いたこともある」という。