会社での評価なんて「適応力」の評価でしかない
一方で、大手企業ではそれほど評価されなかった人がベンチャーで評価されることもあります。
たとえば多動的で、いくつもの仕事を同時並行していないと落ち着かない人。
ひとつのビッグプロジェクトを中長期的に進めることの多い大手企業では「集中力や継続力がない」との評価をされるかもしれません。
ですが、いくつもの仕事を振られるベンチャーでは、少々粗削りでも振られた仕事をすべて着実に前に進めていける人は評価されます。
事業が定まっていないシード期、アーリー期の企業では活躍することもあります。
要するに、組織での評価なんてあてにならないのです。それは単純に「環境に適応できているかどうか」という判断でしかないのです。
ですから、過去の評価や実績を過信していても意味がありません。柔軟性を持ち、今の環境に合わせられる人が、ベンチャーでは結果を出します。
見せかけの「ブランド」が崩れ落ちる瞬間
そもそも大手企業での活躍や評価は、会社の「看板」があったからこそ得られていたということもあります。
ベンチャーに転職した途端、前職では簡単にアポが取れていた相手とも突然会えなくなってしまう。こんなことは日常茶飯事です。
前職を辞める際、きっと取引先は「またお願いしますね」「また機会があったらよろしく」「頑張ってくださいね」くらいは言ってくれます。
ただ、それらの言葉を真に受けて転職後に連絡すると「時間がなくて……」「私は取引したいんだけど、上がダメと言ってまして……」なんて言われたりします。
前職で積み上げた人脈や関係性は、あなたの「人間性」によってではなく、大手企業という会社の「看板」によって築かれたものだったのです。
その見せかけのブランドは、会社の看板が変わった瞬間、崩れ落ちます。これまでに構築してきたネットワークが、会社を辞めると途絶える。かといって新規で開拓しようにも、会社に知名度がなく苦戦する。
こうして、自分本来の能力の低さに、転職して初めて気づく人は少なくありません。
自分の能力を磨くことを怠り、大手企業という看板で仕事をしてきてしまった人は、こういう事態に陥ってしまうのです。
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