強まる国際機関不要論に「混乱が生まれる」
アメリカが脱退することで、今後の世界情勢はどうなっていくのか。
「第二次世界大戦以降、国際秩序はアメリカが中心となって作ってきました。アメリカ国内でもその自負はあり、『それを維持し続けることが広い意味で国益に繋がる』と信じてきたわけです。
その分、制度自体がアメリカの都合のよい形で作られていても、他国はその方針に乗っかり、従ってきました。
しかし、そのアメリカが脱退するとなれば、最も重要な部分が抜けてしまい、制度の運用自体が上手くいかなくなる。これまでの不公平さに対する不満も強まり、国際秩序が乱れ、制度自体が機能しなくなる。では、アメリカに代わって新しい制度を作れる国がいるか、といったらそれもいない。必ず大きな混乱が生まれます」
開戦から3年が経とうとしているロシアのウクライナ侵攻などの一連の対応を巡っても、国連の安全保障理事会が機能しておらず、各国で不信感が強まると同時に、徐々に国際機関“不要論”が広がっている。
「『世界全体がダメなら』とEUやASEANのような地域主義的な傾向になる可能性もありますが、そうした組織に属せない国もあります。世界全体をカバーするものがなくなると、地域ごとの問題も顕著に出てくるようになります。今後、このような状態で国際秩序をどう維持し、どう作っていくかが大きな問題となっていくでしょう」
2025年が始まってまだひと月足らず、早くも正念場を迎えそうだ。
取材・文/集英社オンライン編集部
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西山隆行●成蹊大学法学部政治学科教授
専門はアメリカ政治。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。主な著書に『アメリカ大統領とは何か:最高権力者の本当の姿』(平凡社新書、2024年)『混迷のアメリカを読み解く10の論点』(共著、慶應義塾大学出版会、2024年)『〈犯罪大国アメリカ〉のいま:分断する社会と銃・薬物・移民』(弘文堂、2021年)『格差と分断のアメリカ』(東京堂出版、2020年)など。