疫病に対応できないケースも…

そんな大統領令を乱発するトランプ氏だが、実際アメリカがWHOを脱退することで日本に及ぼす影響とはどのようなものなのか。

「国際機関の場合、各国の経済規模に基づいて分担金が発生します。最大の拠出国であるアメリカが脱退することで、その分の不足金が発生します。総予算を変えないまま、他国の費用負担を増やすのであれば、日本の分担金は増える形になります。

逆に、分担金を変えず小さくなった予算で業務を絞ろうという方針になった場合、日本の拠出金は変わらないとしても、世界的な医療への対応能力は下がることになります。新たな疫病の脅威に晒されたとき、対応できなくなるケースも考えられます」

アメリカのWHO脱退への第一報後の日本国内での反応を見てみると、「日本も同じように脱退してしまえ」という声が多く寄せられていた。そのことに対し、西山教授はこう見解を示している。

「WHOという機関は、健康増進を目的に世界約190の国と地域が加盟し、豊かな国がたくさん拠出することによって困っている国を助けつつ、どこかで疫病が発生した場合などにはお互い助け合う、という前提があったわけです。その認識がかなり弱くなっていると感じます。

WHOに対して、重要なポストを自国の人が占めていて、最終的な決定権を持てるということができれば、そのような批判は弱まるのかもしれませんが、今回のトランプ氏は中国が大きな影響力を行使し、自国が利益を得られていない状態が続いたことで不満感が増幅していったのでしょう」

就任早々、大統領令を乱発するトランプ米大統領(写真/共同通信社)
就任早々、大統領令を乱発するトランプ米大統領(写真/共同通信社)