「何を直せばいいのかわからない」とき
そもそもの話、漫画を描いていれば、必ず直す箇所というのはあるもので、40年以上漫画を描いてきた僕も「ここはこうした方がいいんじゃないですか」と編集者から指摘が入るのはいつものことです。
それを「否定」ととらえるのではなく、「編集者に突っ込まれるということは、うまくいっていない何かがその漫画にあるんだな」と、意識を転換させるのがよいと思います。
あれこれ言われているうちに、いったい何を直せばいいか、わからなくなることもあるかもしれません。特に新人の場合、ヒットする前にいろいろな意見を言われたことで、自分が描きたいと思っていた漫画の方向性がブレてしまうことも多いのではないかと思います。
そうならないよう、編集者はうまく導いてあげてほしいのですが、編集者の言うことを額面通り受け取ると、迷い道に入り込みやすくなるという面もあるでしょう。
たとえば、「この女の子のキャラクターの顔がかわいくないんだよね」と編集者から言われたとします。「こういうのがかわいいのかな、それともこれかな」と迷っていると、何が正解か判断できなくなって、描いても描いても「なんか違うなあ」とダメ出しされてしまうでしょう。
そんなふうに言われた通りにあれこれやってみるのではなく、「編集者はかわいくないと言っているけど、そう感じさせるのは何か他のところにも理由があるんじゃないだろうか」と、自分なりに編集者の言葉を噛み砕いてみることをお薦めします。
そうすると、見た目のかわいさではなくキャラクターの性格や行動を変えることで、編集者も満足する「かわいい」女の子が描けたりするものです。
結局のところ、編集者の指摘が入るのは、「キャラクター」「ストーリー」「世界観」「テーマ」という漫画の「基本四大構造」のつながりがうまくできていないことを意味しているのだと思います。
そして、そのつながりは自分自身で見つけていかないといけません。編集者のコメントは、そのための手がかりと考えましょう。「自分自身で見つけるなんて、ハードルが高すぎる」と思うときは、この本や『漫画術』と照らし合わせながら、編集者の批評を読み解いてみてください。