仲間内の賞賛には高い価値がある!

人間の幸福感は「モテ」にかなり近い場所に根源があるらしいが、別の例を考えてみよう。

よくある疑問だが、「経済学部の最優秀に近い学生は、実業界に就職したら大いに稼げるだろうに、どうして経済学者を目指すことがあるのだろうか。それは、経済原理に反していないか?」。

論理の上では、効用関数は融通無碍なので「経済原理に反する」ということはないのだが、不思議な現象ではある。それは、「経済学の研究に加わっている自分と、仲間内からもらえる賞賛」に大きな価値があると感じるからだろう。

「フェラーリを一台貰うよりも、いい論文が一本書けて最高レベルの学術誌に掲載され、仲間に賞賛される方が遥かに嬉しい」と思う経済学者は少なくあるまい。

”モテない男は幸せそうに見えない”は本当なのか…人生における「幸福」の決定要素は自分が承認されているという感覚だけである理由_6

「仲間内の賞賛」は、大きな経済価値の期待値に勝る喜びなのだ。さて、「仲間内の賞賛」に価値が高いことは、経済学者の世界だけに限るわけではない。他の学問でもそうだろうし、各種の芸事やスポーツ、文学やアートの世界でも同様だ。

「私は、仲間の評価ではなく、自分自身の作品(研究)に満足しているので、他人の評価は自分の幸福感に関係ない」と言い張る人がいたら、「それは勘違いでしょう。もう少し素直に考えましょうよ」と言いたい。