歯周病と心筋梗塞・脳卒中の関係
前項では口の中の細菌(歯周病菌)が全身の病気と関連していることをお伝えしました。
なかでも命に関わる怖い病気が、心筋梗塞や脳卒中といった血管の病気です。
血管が硬くなったり、詰まってしまうことを動脈硬化といいますが、この動脈硬化に歯周病菌が影響を及ぼしているといわれています。
動脈硬化が進むと、心臓に大きな負担がかかり、狭心症、心筋梗塞や脳卒中(脳梗塞、脳出血)のリスクが上がります。
心筋梗塞は心臓周辺の血管が詰まったため、脳卒中は脳内の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたり(脳出血)するために起こります。
心筋梗塞や脳卒中が恐ろしいのは、ある日突然やってくることです。いったん心筋梗塞や脳卒中になると、病院に運ばれても回復せず、そのまま死亡することもあります。あるいは命が助かっても、重い後遺症に苦しむこともあります。
そんな心筋梗塞や脳卒中の原因の一つが、歯周病なのです。口の中の歯周病菌が全身の血液内に流れ込み、血液をドロドロにしたり、血管を脆くさせたりするからです。
心筋梗塞や脳卒中の原因は、いずれも血液がドロドロになったり、血管が脆くなることです。血液がドロドロになると血管が詰まりやすく、心臓周辺の血管に栄養が行き届かなくなります。
そのため心臓周辺の筋肉が壊死を始め、これが心筋梗塞になります。また脳内の血管が詰まると脳梗塞に、血管が破れると脳出血になります。もともと心臓周辺や脳内の血管には複雑なカーブが多く、このカーブ部分の血管が詰まったり、破れたりするのです。
歯周病菌は、この血液のドロドロ化を加速させます。しかも歯周病菌からは血管を脆くする炎症性物質も出ています。この炎症性物質は、わずか数分で全身の毛細血管まで行き渡ります。
歯周病が心筋梗塞や脳卒中を招きやすいことについては、すでにいろいろな報告もあります。
たとえば歯周病の人は、健康な人と比べて心筋梗塞のリスクが2倍に増えることがわかっています。同様に、健康な人の2.8倍、脳梗塞になりやすいといわれています。
2021年に発表された研究では、歯周病治療が血管内皮機能を改善し、炎症マーカーを低下させる可能性が示唆されています。
文/前田一義 写真/Shutterstock