不登校を経験し、笑顔がなくなる…

小学校中学年になった蒼山さんは、名前に汚物のような言葉をつけたあだ名でクラスメイトの男子からイジられるようになり、不登校になってしまった。

最初は蒼山さんを無理やり車に乗せて学校へ行かせていた母親だったが、翌年には諦めたようだ。

母親は図書館へは連れていってくれたため、蒼山さんは本を読んだり、家でテレビを見たりして過ごした。

父親と祖父母は、不登校について何か言うことはなかった。

5年生になると、30代前半くらいの女性教師が担任になり、足繁く家を訪ねてくれて、蒼山さんの話に耳を傾けてくれた。

次第に心を開いていった蒼山さんは、まずは遠足に参加し、徐々に学校行事に参加する頻度を増やしていくと、5年生の2学期には月に一度くらい休む程度で学校に行けるようになっていた。

しかし不登校を経験した後の蒼山さんは、すっかり笑顔のない子になっていた。

写真はイメージです 写真/Shutterstock
写真はイメージです 写真/Shutterstock

笑顔のない思春期

中学生になると、出会い系サイトで友だちや彼氏を見つけて、夜まで遊び歩く。

「ネットで出会ったり、出会い系で知り合った友だちと一緒に、夜遊びしまくっていました」

夜遊びに出かけるときは親に隠れるようにしてコソコソと家を抜け出していたが、親も馬鹿ではない。

何度か母親に見つかっては怒られたり止められたりしたが、繰り返すうちに母親は根負けしてしまう。

だが高校生になると、環境が一変した。

通学に電車で1時間ほどかかる都会の高校に入学したことが功を奏して、蒼山さんは自ら更生した。

「学力に合った高校に入ったので、授業についていけることや、田舎にはないショッピングモールやアミューズメントパークなどの施設で遊べるという喜びで、ただ楽しかったです。学校までの距離が遠いため、家で過ごす時間が強制的に減ったのもよかったのではないかと思っています」

ところが、それでも蒼山さんは笑顔を見せないままだった。

仲のいい友だちはできたが、「なんで笑わないの? 空気が読めないよね」と言われると、そのたびに「なぜ笑えないんだろう?」と自分でもわからず落ち込み、友だちとの距離感に悩んだ。