2021年、児童虐待事件が過去最多に
警察の発表によれば、2021年に摘発された児童虐待事件は2174件と過去最多に上った。このうち虐待死した子供の数は54人だった。
ただし、これはあくまで警察が虐待死と認定した数にすぎない。日本小児科学会によれば、実数は3~5倍になる可能性があるとしており、それにもとづけば150~250人の犠牲者がいることになる。私はこれまで数多くの虐待死事件を取材してきた。その中で、わが子を殺めた親たちが異口同音に語った言葉がある。
「私は子供を宝物のように愛していたけれど、殺してしまいました」
常識的な感覚を持っていれば、なぜ愛していたのに殺したのか理解に苦しむだろう。だが、共通するのは、彼らが注いでいた愛情のゆがみだ。様々な原因によって、親たちの愛情がねじ曲がり、無自覚なまま虐待をし、わが子の命を奪うのである。
私が取材した虐待死事件を参考に、子供を殺すゆがんだ親の愛情について考えてみたい。