批判殺到の人事の裏に人材難

ちなみに政務官の上の副大臣ポストは、衆院当選4回、参院2回が適齢期とされる。そこからさらに大臣に駆け上がるためには衆院当選6回、参院5回を重ねるのが「永田町の常道」とされている。

今井、生稲両氏に加え、登用が疑問視される議員もいる。岸信千世氏のデジタル大臣政務官への起用も評判が悪い。

岸信夫元防衛大臣の息子で安倍晋三元首相の甥という政治家一族のサラブレッドですが、世襲議員に対する有権者の反発をもろに受けている印象です。彼の場合は、演説の不安定さが際立っており、直近の衆院選でも野党候補の猛烈な追い上げを食らってギリギリの戦いを強いられたほど。

デジタル大臣政務官となった岸信千世氏(本人事務所Facebookより)
デジタル大臣政務官となった岸信千世氏(本人事務所Facebookより)

同じ世襲議員では金子原二郎元農水相を父に持つ、金子容三衆院議員が防衛大臣政務官に、武部勤元幹事長の息子の武部新衆院議員が文科副大臣に就いています。
いい意味でも悪い意味でも、その一挙手一投足が目立つ岸氏をはじめとする世襲組には厳しい視線が向けられ続けるでしょう」(同前)

政務官ではほかに、ウイグル族の父とウズベク人の母の間に生まれ日本に帰化した異色の経歴を持つ英利アルフィヤ衆院議員が外務大臣政務官に就いた。

日銀の行員を経て国連職員に転じた国際性が評価されたとみられるが、ネット上ではこの人事に異論を唱える者が少なくない。

「ワクチン対応を巡って一部のネットユーザーと論争になることが多い河野太郎前デジタル担当相と近い関係にあることがアルフィヤ氏への反発を招いている面もあります。
河野氏は、アルフィヤ氏が自身の母校であるジョージタウン大学の出身だということもあり、積極的に選挙応援に駆けつけるなど特に目をかけている。

ただ、河野氏は反ワクチン勢のみならず、対中政策のスタンスでネット右翼界隈とも対立することが多い。アルフィヤ氏もそのあおりを受けて言動が炎上しがちです」(同前)

英利アルフィヤ氏も外務大臣政務官に(本人Facebookより)
英利アルフィヤ氏も外務大臣政務官に(本人Facebookより)
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 総裁選での勝利を受けて10月から新政権を発足させた石破首相は、衆院解散前の第1次内閣では閣僚人事には手を付けた一方、副大臣・政務官については前任の岸田政権からメンバーを引き継ぎ、独自色を出すのは封印した。

今回の人事で「石破カラー」を本格的に押し出した格好だが、世間の反応を見ると新政権の船出は順風とは言いがたい。なぜ、こんな顔ぶれになったのか。

ある自民党議員のベテラン秘書は、「一言で言うと、人材難。石破首相は今回の人事で『裏金議員』の排除を打ち出し、旧安倍派の多くが選から漏れた。加えて衆院選では与党過半数割れという結果となり、副大臣・政務官候補になり得る中堅議員の多くを失った。少ない手駒の中で見繕ったのがあのメンツというわけさ」とため息をつく。

枯れ木も山の賑わい……といったところか。いずれにしても、円安・物価高への対応や、米国でのトランプ政権の誕生と内憂外患の「石破丸」を下支えするには、なんとも心許ない布陣であることは間違いなさそうだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班