目じりをぬぐいながら演説を聴く女性も
神戸市の西、明石市に近いJR垂水駅前で15日昼前に斎藤陣営が行なった演説会も熱気に包まれた。400人を超えるとみられる聴衆が演説予定時間前に詰めかけ、平日の日中とは思えない光景だ。
地元の60代の女性が「ここに選挙でこんなに人が集まったのは見たことがない」というほどだ。
「斎藤元彦、斎藤元彦です!」
選挙カーの声が聞こえ始めた瞬間に湧き上がる大きな拍手。車を降りてお立ち台に向かう斎藤氏は握手ぜめにあってなかなか前に進めないほどだ。
そこで、「せーの」と拍子を合わせる声に続いて「斎藤さ~ん、お誕生日おめでと~」のコールが上がる。誕生日を祝う手書きのプラカードを持った女性らが10人近くもいる。
「私は43歳で知事になりました。あ、きょう誕生日ですね」
ときに笑いも取りにいく斎藤氏が若い世代のための政策を強化していくと訴えると、感激して目じりをぬぐいながら聴き入る女性もいる。
この日の演説で斎藤氏は、失職につながる契機となった、県の元西播磨県民局長のAさん(60)が3月にメディアなどに送った告発文書について全面的に反論した。
Aさんは告発文書で、斎藤知事が出張先での県産品のおねだりや部下へのパワハラを繰り返していると訴えた。
また、昨年11月に行なわれた県の関係会合に出席した斎藤知事が、建物のそばまで車を寄せられない会場で20メートルほど歩くことになって部下に怒鳴り散らした、などと指摘した。
Aさんはその後、告発文書の発信者と特定されて懲戒処分を受けた後、7月に自死したとみられている。
処分の過程で県当局はAさんの公用パソコンに保存されていた個人的な情報を入手し、Aさんはこれが出回るのを恐れていたと関係者は話す。
Aさんの死後、県議会の調査特別委員会(百条委)が行なった県職員のアンケートでは、告発文書と同趣旨の回答が多くあった。
だが、告発文書の真偽について百条委が結論を出す前に、百条委に出席した斎藤氏がAさんの死に絡み「道義的責任というのが、私わからないです」と発言したことで県議会側がヒートアップ。
「(斎藤氏が)告発文書に不適切、不十分な対応をして県政を混乱させた」ということだけを理由に不信任決議を可決し、今回の再選挙につながったという経緯がある。