昔は今よりも3~4年、大人になるのが早い?

なぜ、アニメキャラはこんなにも貫禄があるように見えてしまうのだろうか。

アニメ産業を研究しているアニメライターのいしじまえいわさんは、作品が生まれた昭和から平成初期の日本は、「子どもに対する大人の責務や役割が今と比べて強く意識されている社会でした」とし、当時の社会の背景に基づきながら解説をする。

「当時、子どもは両親や肉親だけでなく地域や社会全体で育てるべきで、周囲の全ての大人にその責務があるという価値観でした。また、現在と平成元年(1989年)とを比べると、平均初婚年齢は男女ともに今よりも3~4歳若く、第1子の平均初産年齢も、1985年は26.7歳だったが、2022年は30.9歳と上がっています。つまりそれだけ多くの人が今よりも早く人の親になり、大人の責務を負っていたわけです」

そこでアニメにおいても、当時の大人キャラクターは主人公である子どもに対して責務や役割を担った存在として描かれる場合が多かったと予想されるわけだ。

例えば、ランバ・ラルは主人公アムロ・レイにとって超えるべき壁として登場するし、野原ひろしは当然、しんのすけの父親の役割を果たしているうえ、いざというときは身を挺して家族を守る強さを見せている。

こちら葛飾区亀有公園前派出所 1巻(C)秋本治/集英社
こちら葛飾区亀有公園前派出所 1巻(C)秋本治/集英社

「また、アニメのキャラクターデザインにおいては、その人物が作中でどのような役割を担っているのかが一見して分かることは重要な要素です。大人の役割をもった大人キャラが、しっかりと大人っぽい顔をしていることは、昔のアニメの作劇において重要な要素だったのです。

さらに現在は個人主義的な考え方が広まったためか、昭和~平成初期に比べると子供を地域で育てるという感覚は減り、両親が育てるものと考える人が増えているように感じられます。

そうなると『実子でない子供全般に対して社会的責務を負う大人キャラ』という存在自体が時代にそぐわず、アニメにおいても扱う機会が減るのは自然なことです」