脇が甘くても、玉木氏以外に党の顔は不在
「本当に大事な時期にもかかわらず、今回のような騒動を起こしたことを悔やんでも悔やみきれない」
国民民主の玉木代表は不倫報道があった11日夜、有楽町駅での街頭演説で頭を下げた。衆院選のときのようなお立ち台の上ではなく、聴衆と同じ地面に立ち、トレードマークの黄と青のネクタイではない、紺色のネクタイ姿で厳しい表情を見せた。
玉木氏はこの日の朝、緊急の記者会見を開き、元グラドルとのデートやホテルでの密会といった報道内容をおおむね認め、謝罪。その数時間後に開かれた党の両院議員総会では、代表交代を求める声は上がらず、続投が決定した。玉木氏も、今後も所得税の負担軽減を目指し党の看板政策である「103万円の壁」引き上げに向けた交渉に力を入れていく考えを示した。
「玉木氏は2018年の旧国民民主党の結党以来、代表を務めてきましたが、彼以外に党の顔がいないのが現状です。これだけ注目されている時期に不倫相手と密会するという、信じられない脇の甘さを露呈しましたが、国民民主が玉木氏に投票すると決めていた首相指名選挙の朝に、玉木氏の交代を決めることはできなかった形です」(全国紙政治部記者)
玉木氏はネット上で報道が出た3時間後には謝罪会見を開くというスピード対応で幕引きを図り、影響を最小限に抑えたい考えだが、永田町では国民民主の今後に冷ややかな声も上がる。
まず、玉木氏自身の発言力低下だ。
「これまで玉木氏は衆院選での躍進を背景に、『103万円の壁』を178万円に引き上げるよう、強気に求めてきました。しかし不倫報道によって、自民が玉木氏の要求に少しでも応じることで、玉木氏のイメージを上書きしてあげるという構図になりました。
とくに年収103万円以内で働いているパートには女性が多い。『103万円の壁』引き上げは、スキャンダルで失った女性の支持回復につながる可能性があります。自民に対する玉木氏の立場は、少し弱まるのではないでしょうか」(同前)
「103万円の壁」引き上げに慎重だった財務省や、自民党の連立パートナーとして国民民主の存在感増大に危機感を抱いていた公明党からすれば、思わぬ敵失に胸をなでおろす格好になるが、一抹の不安もあるという。
「玉木氏は自民との交渉を通じて、少しでも引き上げ幅を大きくしたい考えでしたが、発言力が低下すると、さほど大きな引き上げ幅にはならない可能性が出てきます。
ただ、スキャンダルでピンチに陥った玉木氏が手柄を立てようと、逆に焦って178万円への引き上げにこだわりを見せ、なかなか譲歩しない可能性もあります。玉木氏の発言力が低下したところで、自公で衆院の過半数を取れていない事実は変わりません。玉木氏がおとなしくなるのか、ヤケクソで突き進んでくるのか、注目されています」(同前)