炎天下の暑さに耐えるホームレス生活

「ホームレス」という言葉から連想する姿とはほど遠い、清潔感のある服装で取材場所に現れた福谷さん。街ですれ違っても、誰も彼が公園で暮らしているとは思わないだろう。しかし実際は家も仕事もなく、一人でひたすら暑さに耐える夏だったという。

「公園やコンビニ、立体駐車場なんかを転々としながら車で暮らしています。少し目立つ車なので、なるべく同じ場所にいないようにして。夏場は朝6時半には気温が30度近くなる。僕のいた山梨は日中38~39度まで上がりました。2回ほど熱中症になりかけて、動けなくなったこともありました」(福谷さん、以下同)

いかにも車上生活者、といった印象を避けるため自炊はせず、食事はカップラーメンや冷凍食品、惣菜などを買う。店に備えつけの電子レンジやポットで調理し、その場で食べて捨てる。

「イオン系の大きなスーパーだと、夕方には弁当が半額になって200円とかで買えるんですよ。もともと少食で、1日1食でも平気なんですけど…でも、どんどん精神的に削られていきますよね。普通に茶碗に盛った米とお味噌汁と焼き魚とかでいいから、そういうご飯が食べたいなっていう気持ちは頭から離れないです」

1台の車と、その中にあるものがほぼ全財産。まだ回線契約が有効なiPhoneが社会との唯一の接点だ。

「もう手元にスマートフォンしかないので、ずっと見ています。一日中寝ていることも多かったです。することがないというのもありますけど…精神的に何もできなかったというのが近いです」

入浴はインターネットカフェで、洗濯はコインランドリーで済ませる。収入がないのに現金を使った生活ができているのは、福谷さんがもともと自営業だったことによる。

「今は全ての口座とカードが止まっている状態なんですけど、現金商売をしていたこともあって、手元にキャッシュを置いていたんですね。それをかき集めて車上生活を始めました。やってみると、この暮らしはランニングコストがほとんどかからない。でもリミットが近づいています。まもなく車検が切れるんです。その後のことは…わからないですね」

自宅から持ち出せたわずかな所持品で暮らす(本人提供、以下同)
自宅から持ち出せたわずかな所持品で暮らす(本人提供、以下同)