詰められた指の行方

病院では切断した骨の周りをきれいに削り、皮を伸ばして切断した指先にきれいに被せて、医療用ホチキスでパチンパチンと留められるという。

「切る場所によっては、関節が残っていると切断面がきれいに丸く治らないため、ペンチみたいな器具で骨をバチンと外されるらしい。下手な医者に当たると、指先が膨らんだようになって不格好になる。

知っているヤクザに、指先が『きのこの山』みたいになっていたヤツがいる。救急で行った病院の医者が下手だったらしい。指詰めは治療に慣れた医者を選ぶのも肝心だ」(同前)

指を落とすのは、まず利き手とは逆の小指からになる。落とす理由は、今も昔も金絡みが最も多い。組の金やシノギを使い込んだり、仕事で穴をあけたり、下手を打って損失を出したりして自分ではどうにもできなくなって指を詰める。

組長や兄貴分の女に手を出したなどでケジメをつけるときは、利き手の小指という時代もあったが、今はそれはないという。

しかしケジメをつける相手によって、指の落とし方が違うのは今も変わらない。

「上部組織などに指を持っていくときは、必ず爪がついている指を持っていく。左手の小指の第一関節を落としてしまっていたら、右手の爪のついた小指を落として持っていく。そこもなければ左手の薬指になる。組内なら爪がついていなくても許されるから、左手の小指の第二関節を落とす」(同前)

(写真はイメージ)
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爪がついていればいいなら、足の指でも許されるのかと聞くと、A氏は「そういうやつもいるだろうな。指には細いのもあれば太いのもある。短いのもあれば長いのもある。要は爪がついた指ならいいんでね。どこを切ったかなんて、包帯が巻かれていればいちいち確認しないからな」という。

A氏の知るヤクザの中には、5回も6回も指を落とした者がいたという。

切り落とされた指はその後、どうなるのか。

「若い衆の指なら『こんなもん、いらん』といって、生ゴミとしてポンと捨ててしまう組もあれば、昔は親分がその場で差し出された指を飲み込んだという組もある。大概は小さな小瓶に入れてホルマリン漬けにして保管されるが、並んでいる光景はなかなかのホラーだ」(同前)

今は指詰めを禁止している組もあると聞くが、それでもヤクザの指詰めはなくならない。

逮捕された野内容疑者の詰めた指は誰に届けられ、どうなったのだろう。気になるところだ。

取材・文/島田拓 集英社オンライン編集部ニュース班