切り落としたら病院より先に親分のもとへ

落とす場所は関節の少し上。すると切られた指先がピュッと飛ぶという。

「血が溜まっていた勢いで、指先がピュッって飛ぶんだ。1度目はこれぐらいかな」とA氏がテーブルの端に目をやるが、その距離はゆうに50~60センチはある。しかし2度目はもっと飛んだという。A氏に言わせれば、切られた指がそのまままな板の上にあるというのは、極道映画の中だけだという。

まな板に小指を置くとき、爪は下、指の腹を上にする。

「爪を上にするほうが落とす場所を決めやすいが、指が斜めになって切りにくい。切った痕が斜めになると、病院に行ってから余分な骨を削られるんでね」と、A氏は小指をさすった。

指の腹を上にして自分で場所を決めると、できるだけ指を残したいと思うらしく、切断場所が少しずつ指先のほうに上がっていくという。

「短くても爪がついていればいいんで。落とした指の長さをどうこういう者はいませんよ。たまに落とした指が短くて、後で爪が生えてくることがあるけどね」とA氏。

生えてきた小さな爪を、爪切りで愛おしそうにパチパチと切っていた子分もいたという。

(写真はイメージ)
(写真はイメージ)

指を落とすために使われるのは、昔ならドスか包丁。今はノミか包丁が多いらしい。

もう亡くなったが、関東を中心に活動していた暴力団組長は指を落とさなければならなくなったとき、ドスを小指にあてがい自分の体重をかけて落としたと聞いた。

子分の不始末の責任を取って、ケンカ相手の組長の前で包丁を指に当て、置いてあった大理石の灰皿をそこに一気に落とした組長もいたという。

「出刃包丁ならいいが、普通の包丁は金づちで打ちにくく、切り口が斜めになりやすい。骨が切れなくて、指がぶら下がることもある。ノミのほうがキレイにすっぱり落とせる」(同前)

指を落とすのはいいが、落とした指をいつ持っていくかが問題だ。指を落としたほうは痛くてたまらないから、一刻も早く病院で治療を受けたい。

最近はすぐに病院に駆け込めるよう、病院の近くで指を落とすという話も聞く。

「病院に行った後に指を親分に持っていけば、『ばか野郎、なんで先に来ない。こっちに来るのが先だろう』と怒鳴られる。病院にいく前に持って行けば、『バカか、わかったから、早く病院に行ってこい』となる。痛みに耐えながら、病院より先に親分に指を持っていくのが極道だ」(同前)