立浪監督は「正しい野球理論を備えた監督」である
立浪監督に対する批判において、多く聞かれたのが「指導手腕を疑問視」する声だった。「選手に厳しすぎるじゃないか」「自分が掲げる高い理想を、選手に押し付けすぎていないのか」―。そんな声も聞かれたし、挙句には「実は立浪監督は怖い人なんじゃないのか」と、一方的な人格批判を繰り広げる人まで出てきた。
けれども、私はこうした声には「ノー」と否定しておきたい。それには二つの理由があるからだ。
まず「選手に厳しすぎるのじゃないか」「自分が掲げる高い理想を、選手に押し付けすぎていないのか」ということについては、「正しい野球理論を備えている」と言いたい。
打撃にしろ、守備にしろ、彼の考えには納得のいくものが多い。たとえば打撃については、体の開きを抑えるコツや、バットを強く振る方法、相手投手のウイニングショットを打つ秘訣など、彼なりの理論をきちんと備えている。
ここでは詳しい技術は省かせてもらうが、彼が高い技術を追い求めていることは、一緒に解説をして話を聞いているなかでよくわかった。そのうえで、
「バッティングは十人十色。『こうすれば必ず打てる』という絶対的な打ち方はない」
ということも、立浪本人はよく理解していた。
2023年シーズンまではよく、「立浪は監督という立場で選手に打撃技術を指導していた」という記事を目にすることがあったが、個々の選手の特性を見抜いたうえでアドバイスしていたということも、旧知の記者たちからたびたび聞いていた。
それだけに、中日ファンが言うほど、間違った理論を押し付けているようなことはなかったと、私は見ている。