アバクロとGAPはアメリカ以外のエリアで大苦戦中

ユニクロが得意とするイギリスやフランス、ドイツが好景気に沸いているかというと、決してそんなことはない。むしろ景気低迷が深刻化している。

それでは、なぜユニクロが支持されているのか。

そこには消費者意識の変化が背景にあり、ユニクロのブランドが持つ「低価格×素材・機能性」が、欧州の人々に受け入れられるようになったのである。

イギリスにある「ユニクロ リージェントストリート店」 写真/Shutterstock
イギリスにある「ユニクロ リージェントストリート店」 写真/Shutterstock

ユニクロは”LifeWear(究極の普段着)”をテーマとし、リネンやカシミヤ、繊細な糸を生み出す羊の毛を使ったエクストラファインメリノなど、天然素材を活かした衣類を低価格で提供している。

欧州では、このような天然素材の商品の売れ行きがいい。

ここでキーワードとなるのがインフレである。

欧州では2022年から過度なインフレが進行し、消費者物価指数は10%を超えて記録的な上昇が続いていた。

それにより、消費者はファッションにかけるお金を節約するようになった。

デロイトトーマツは、「グローバル消費者動向調査」にて、欧州の消費に関するデータを公開している。その中に生活費の項目別出費比率を示したものがある。

それによると、イギリスの中間層が2021年10月に衣服・パーソナルケア商品に使った金額の割合は全支出額の10%。しかし、2023年10月は7%まで下がっている。低所得者は11%から10%、高所得者は9%から7%に減った。

この傾向はフランスにも当てはまる。中間層がファッションにかけるお金は、10%から8%に低下しているのだ。

こうした消費トレンドの影響を受けて苦しんでいるのが、中価格帯のファッションアイテムをそろえるブランドだ。

ABERCROMBIE & FITCH(アバクロ)は2019年6-8月のアメリカ以外のエリアの売上高が2億9700万ドルだったが、2024年6-8月は1億9900万ドルとなった。なお、欧州はその8割を占める主力エリアだ。

ニューヨークのABERCROMBIE & FITCHの店舗 写真/Shutterstock
ニューヨークのABERCROMBIE & FITCHの店舗 写真/Shutterstock

GAPもアメリカ・カナダ以外のエリアは苦戦している。2019年6-8月の売上高は4億1900万ドル、2024年6-8月は1億4400万ドルだった。ヨーロッパは3割ほどを占めている。