クシャクシャになった紙が元には戻らない

この日も上下黒色のスウェット姿で出廷した長田は、この代読に徐々に顔を紅潮させ、視線を正面からやや下に向けた。

被害者Eは父親が陳述に立ち、怒りをにじませながら大きな声で読み上げていった。

「私の娘は、被告人から性被害を受けました! 長田は被害者だけでなく、周囲にも暗い影を落としました。

事件以来、私たち保護者は保育園や子どもたちを取り囲む周囲の環境が安全かどうか警戒するようになり、手放しに信用することができなくなりました。人として最低な行為です。

事件の前後でストレスの感じ方にも変化が生じています。この先、娘が性について知っていったときどうなるのか。心の傷もさることながら、性病も不安で検査させました。娘が注射を怖がり、採血で泣き叫ぶ姿を見てつらくてたまらなかった」

長田被告(本人SNSより)
長田被告(本人SNSより)
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ハキハキしていた父親の声は震え出し、時おり鼻をすする音が混じるようになった。

「私は事件のせいで慢性腸炎になった。妻も身内の不幸などが重なり、吐き気や胃痛に悩まされています。長田の被害者は7人とされているが、他の保護者から聞いた話では、押し入れに入れられたり目隠しをされた児童はもっといると思っている。

裁判での長田は話がコロコロ変わり、内容が薄いと感じました。自分の家族の話では涙を見せたものの、被害者の話では一切涙を見せず、一切反省を見せませんでした。

被告人も被告人の親も、資産を持ち逃げした元妻も、その血を引いた子どもも、一族に対する憎しみの気持ちが沸きました。私達夫婦の思いとしては、被告人は去勢し、一生独房から出てこないことを望みます」

被害者Fの意見陳述は検察官が代読した。

「娘は被害から3年経っても被害を隠して生活している。自分がおとなしいから狙われたのかと悩んでいる。長田は娘を狙った理由を『特にない』と話しているが、誰でもよかったのか、なぜ娘が狙われたのかと怒りを覚える。

A園での性加害の回数は覚えていないと話しているが、覚えていないはずがない。長田は捜査で児童ポルノで自慰をしたと明かしているが、公判ではダウンロードしただけだと述べるなど、公判全体を通してその場しのぎの反省しか見えない」

東京地裁(撮影/集英社オンライン)
東京地裁(撮影/集英社オンライン)

被害者Gについては代理人の弁護士が代読した。

「娘は事件以前と変わらない生活を送っているが、クシャクシャになった紙が元には戻らないように、傷ついた心も元には戻りませんし、トラウマやPTSDがいつ発症するかわかりません。

日本のすべての保育士を信用できなくさせたのも、非常に罪深い。公判でも節々に自己弁護が目立ち、自身が小児性愛者だと病気のせいにして他責的であり、浅はかで許すことができません。長田は早く社会に戻りたがっているが、再び繰り返すと確信していますし、二度と世に出てこないよう望みます」