声は人間にとって第2の顔

なので私にとって一番の苦手は「沈黙」です。

声も息遣いもないとさすがにお手上げ。患者さんが怒って黙っているのか、哀しんで黙っているのか、笑顔で黙っているのか、私には分かりません。沈黙の判別はやっぱり表情が見えないと不可能なのです。

ちなみに企業秘密なのであんまり詳細には書けませんが、患者さんに向けるこちらの「声」には意識的に変化をつけています。

声優さんがアニメとラジオドラマで異なる演技をするように、こちらも患者さんの状態によって、性格によって、伝えたいメッセージによって、言葉遣いはもちろんですが声質も調整して話をしています。

まあそれがどれだけの効果を発揮しているかは分かりませんが……いつかちゃんとした手技として確立できたら発表したいと思います。

「大切な人の気持ちがわからないなら声に耳を澄ませて」目の見えない精神科医が声色で相手を見抜ける理由_3

そんなわけで、声は人間にとって第2の顔。

「声色」は「顔色」以上に心を反映しています。学校の先生や相談係など、人間相手のお仕事をしていらっしゃる方はぜひ参考にしてみてください。

そして、もしあなたが大切な家族や友人の気持ちが分からずに悩んでいるのなら、相手の声に耳を澄ませてみるのも良いかもしれませんよ。

そしてもしも、あなたが浮気や不倫をしているのなら、バレるのも時間の問題です。だって、浮気をしている人の声にだけ含まれるノイズがありますから。

写真/shutterstock

目の見えない精神科医が、見えなくなって分かったこと
福場翔太
目の見えない精神科医が、見えなくなって分かったこと
2024年10月10日
1540円(税込)
ISBN: 978-4763141736
何が大切か、見えなくなったあなたへ。 「目の見えない精神科医」が贈る、希望へのガイドブック。 この本の著者は、北海道美唄市にて精神科医として従事される福場将太さん。NHK北海道に「目の見えない精神科医」として出演され、話題となりました。 医学部5年生の時に、徐々に視野が狭まる病を患っていることが発覚。そしてとうとう32歳で完全に視力を失いました。
それでも福場将太さんは、10年以上に渡り、患者さんの心の病と向き合ってこられました。 目が見えるからこそ、見えるもの。 目が見えるからこそ、見えないもの。 目が見えないからこそ、見えないもの。 目が見えないからこそ、見えるもの。 そんな4つの世界を、「見えていた頃の生活」と、「見えなくなってからの生活」を行き来しながら書かれたのが本書です。
「視覚障がい者の視界は、意外にもカラフルです。 真っ暗な世界なんて、とんでもない!」 「人間は全てを手に入れられない分、全てを失くすこともできないのです」 「私にとって目が見えている人は、もはや超能力者なのです。 だって私にとっては不可能に近いことも、一瞬で成し得てしまうのですから」 「人生は一本道じゃない。行けるところまで行ってみて、ダメになったらダメになったで、また別の道を探せばいい」 ……など、福場さんだからこそ語ることのできる、明日を明るく照らす希望の言葉が満載です。 もしもあなたが目の見えている人なら、大切なものを見つめ直すガイドブックとして。そして、もしも目の見えていない人なら、頼りたい視覚がなくても希望を見つけられるガイドブックとして、手に取っていただけることを願って。
amazon