“御用聞き”専門スタッフが生活をサポート

そんな老人ホームは、当時も今も施設そのものにはさほど変化はないという。

そこで、実際にサクラビアの内部を見学させてもらうことにした。案内してくれたのは、お客様相談室の主任、石塚幸一氏(仮名)だ。サクラビア成城に勤務してから16年経つという石塚氏もまた老人ホームの職員という雰囲気はなく、若くて爽やかなホテルマンといった印象である。

お客様相談室とは、いわゆる営業部署のことだ。石塚氏は一昨年から同部署に配属されたそうだが、それまでは居住者と直接対面し、日々の生活をサポートする「ハウスキーパー」という部署にいたという。

「お住まいの方の御用聞きというか、困ったことがあったらお手伝いする部署にいました。細かいことで言えば、瓶の蓋が開かなくなったから開けてほしいとか、高い所のものに手が届かないから取ってほしいとか。衣替えをしたいから手伝ってほしいとか」

雑用をするための専門部署があることに驚いた。入居者の困りごとは所属部署に関係なく、頼まれたスタッフや気付いたスタッフが快く応じてくれるものだと思っていたからだ。

画像はイメージです
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石塚氏に館内を案内してもらう途中、居室の前で女性の清掃スタッフから、「こんにちは!」と明るく声をかけられた。エレベーターでの移動中も、途中階で居住者が乗り込んでくる際は、石塚氏は素早くエレベーターを降りて「お先にどうぞ」と対応する。その様子が一流ホテルにありそうな光景だった。

代わりにエレベーターに乗り込んだ居住者の男性は仕立てのよいスーツを纏(まと)い愛想よくお辞儀を返してきたが、その家族と思われる若い女性が私たちと目を合わせようとしなかったのが気になった。

まずは、標準的な居室である約68平米のモデルルームに案内された。入居一時金が約1億5000万円以上の室内は、リビングに加えベッドルームがあり、二人で暮らしても十分な広さがある。

キッチンはコンパクトな設計だ。館内にレストランがあるため、室内で頻繁に料理を作ることを想定していないからである。また、一定時間人が通らないと異常を知らせてくれる生活リズムセンサーも標準で装備されている。独居の居住者が室内で倒れていても、すぐに発見できるというわけだ。清掃は月に2回で、管理費に含まれているという。