短時間型睡眠薬にはさまざまな副作用がある

睡眠薬には大きく分けて「ベンゾジアゼピン系」と「非ベンゾジアゼピン系」の2つがある。

「ベンゾジアゼピン系」とは脳の中に、「ベンゾジアゼピン系受容体」という所があり、ここのスイッチを押されると脳の興奮が抑えられ眠気が出現する。

ベンゾジアゼピン系はここのスイッチを押してくれる薬なのだ。ここのスイッチを押すことで、「GABA」という眠くなる神経伝達物質が分泌され、人は眠くなるという仕組みになっている。

「なぜ、『ベンゾジアゼピン系』と『非ベンゾジアゼピン系』の2つに分かれているかというと、『ベンゾジアゼピン系』こそ、耐性と依存がつきやすい薬だからです」

具体的なベンゾジアゼピン系は
・デパス(エチゾラム)
・ハルシオン(トリアゾラム)
・サイレース(フルニトラゼパム)
 といった薬だ。

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特にデパスは「短時間型睡眠薬」と呼ばれ、要するに即効性のある薬ということ。
使ってみると最初はすっと寝られるが、耐性や依存性が問題になってくることが多い。

「デパスにはもう一つ特徴があります。それが筋弛緩作用です。筋肉を緩める作用のため、実は肩こりにデパスが使われることもあります。

これだけきくと『一石二鳥のいい薬じゃないか』と思われるかもしれませんが、この筋肉を緩める作用と、そもそもの強い作用があいまって、ふらつきや転倒が起きやすくなることも。

そのため、高齢になってデパスを飲んでいると転倒して足の骨を折るなどというリスクもあり、医者の間では気軽に処方する薬ではないと言われています。

もちろん、絶対に使ってはいけないということではないですが、そういったリスクを理解しておいたほうがいいでしょう」

また、ハルシオンやサイレースは青色の錠剤が特徴。

「青色なのは、悪用を防ぐためなんです。例えば飲み会でわざと飲み物に睡眠薬を入れるといったような悪質な行為を防ぐために、水に溶けたときに青色になる仕組みになっているんです」

「ベンゾジアゼピン系」の中にもデパスのように即効性のある薬だけでなく、中時間型、長時間型と呼ばれるマイルドに効いてくれる薬もある。

具体的には
・コンスタン(アルプラゾラム)
・ワイパックス(ロラゼパム)
・メイラックス(ロフラゼプ酸エチル)

などだ。

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「令和の時代には『ベンゾジアゼピン系』より耐性・依存性が改良された薬がありますから、ベンゾジアゼピン系ではない薬に変えられるのなら変えたほうがよいです。

ですが、どうしても実際の現場では効果のしっかりと出るベンゾジアゼピン系を使うこともある、ということも知っておいてください」

また、睡眠薬の副作用として疑われている認知症のリスクについては、一部の研究でベンゾジアゼピン系の睡眠薬が認知症のリスクを上げるかもしれないという報告はあるものの、まだはっきりとはしていないようだ。

「ただ、睡眠不足というのは健康に明らかによくなく、死亡率を上げるというデータもあるので、もし普段から眠れない状態が続いていて、いろいろ工夫をしても改善しない場合は、リスクを理解したうえで薬に頼るという選択肢は決して悪いことではないでしょう」