20代でギャンブル依存症の相談にくる人が年々増えている
今回のような報道があると、当院でもギャンブル依存症に関する相談が一時的に増えるということはありますが、受診者が劇的に増えるということはなく、常に一定数の方が外来を受診しています。
受診者数より気になるのは、年々若年層の患者さんの受診が増えていることです。
これまでギャンブル依存症の患者は30代~40代の男性が多かったのですが、最近は20代での受診も増えてきています。
社会でギャンブル依存症が認知されてきたため、早めに受診しようという動機に繋がっているのか、あるいは、ギャンブル依存症の若年化が進んでいるのかもしれません。令和2年からの新型コロナウイルス感染症の流行により、移動制限や人同士の接触を避けるため、急速に社会のオンライン化が進みました。
日本では、ギャンブルの対象として、パチンコ、パチスロなどの遊技が最も多いのですが、競馬、競輪、競艇、オートレースの公営ギャンブルは、競技場だけでなくオンラインでも投票できるようになり、近年オンラインを利用したギャンブルが増えています。
中高年に比べると、一般的に若い人のほうがインターネットやスマホの操作に慣れていることもあり、気軽にオンラインでギャンブルを開始して次第にのめり込んでしまうのかもしれません。
ギャンブル依存症とは、ギャンブルによって日常生活にさまざまな問題が起こっているにも関わらず、ギャンブルを続けたいという衝動をコントロールできない病態をいいます。
自身のギャンブル行動や賭けた金額などについて周りの人に噓をつく、借金してまでギャンブルを続ける、といった特徴があります。金銭的な問題などで、本人のみならず家族や周りの人たちにも多大な影響を及ぼします。
ギャンブル依存症のメカニズムとして、脳内報酬系の機能異常が指摘されています。脳内報酬系とは、快感刺激によって脳内のドーパミンという神経伝達物質が放出され、喜びを感じたり、ワクワク感や気持ちよさを感じたりする神経系です。
ギャンブルをして勝つと快感・興奮を覚えますが、脳内ではドーパミンが脳内報酬系で大量に放出されます。ギャンブルを繰り返すと次第にその刺激に慣れてしまい、同じ刺激では満足できず、より強い刺激を求めてギャンブルがやめられなくなってしまいます。
ギャンブル依存症の発症には、生物学要因、性格、環境要因などが組み合わされていると考えられています。
疫学調査では、男性に多く、好発年齢層は20~40歳代です。若い頃のギャンブル体験や、本人の性格傾向として、思いついたまま行動してしまう、カッとなって大声を出すなど衝動性が強い人は、よりギャンブル依存症になりやすいとされています。
環境要因としては、ギャンブルへのアクセスしやすさがあります。遊技場や公営ギャンブル場が身近にあると、ギャンブルをやめようと思ってもなかなかやめづらいものです。また、最近はオンラインでギャンブルに手軽にアクセスできる環境となり、ますますやめにくくなっています。
ギャンブルを始めた頃に大勝した経験(いわゆるビギナーズラック)がある人や、日頃からストレスを抱えたり、退屈を感じたりして、それを紛らわせるためにギャンブルをしている人などは要注意です。