「全女で、悪役として生きていくしかないんだ」
──『極悪女王』のなかでは、ダンプ松本さんのみならず多くの選手が貧困などと隣り合わせの生活をしていて、ある種の一発逆転の手段として女子プロへの入門を選んでいますよね。ブルさんはどうでしたか?
ブル中野(以下同) 私も暮らし向きは裕福ではなかったと思います。というのは、借金取りに追われて、3回くらい小学校を転校しているんです。経済的自立を手に入れたいという思いはありました。
一方で、女子プロ入門のきっかけは、母が好きで私も憧れていたアントニオ猪木さんと同じ世界にいたいという思いもありました。
母からも「オーディション受けなさい」とか言われて(笑)。私は他のスター選手のように運動神経がよかったわけではないので、どうしたらトップ選手になれるか必死に考えていました。
──本作でブルさんが登場したばかりのころは、常にダンプ松本さんの側にいて、おどおどした振る舞いが印象的です。それがバリカンで髪の毛を剃って……(笑)。
そうですね。15歳で入門して2年間くらいは、先輩レスラーについていくので必死で、心までヒールになりきっていなかったと思います。
本当にヒールとしてやっていこうと腹が決まったのは、例のダンプさんにバリカンで髪の毛を剃られたときだと思います。
全女で、悪役として生きていくしかないんだ、という覚悟のようなものが頭をもたげてきました。
──その後、ダンプさんが引退されたあと、獄門党を結成されます。そこから「女帝」と呼ばれるスター選手になるわけですが、当時、どのようなヒール像がご自身のなかにありましたか?
ダンプさんは対戦相手を一斗缶で殴打したり、竹刀で突いたり、派手でわかりやすいスタイルで、最終的には全女の人気に多大な貢献をしました。
ただ、どうしても私に同じキャラクターが務まるとは思えませんでした。
私が目指したのは、武器は使用するけれども、ストロングスタイルと呼ばれる基本技術で感情を表現する闘い方です。
使用する武器も、奪い返されたら逆にやられるようなものではなく、ヌンチャクなど、ある程度の修練が必要なものを好みました。