教育費負担が重すぎる
それは健康保険制度を破壊する。先述したように、大企業の健康保険組合(組合健保)でさえ、2023年度の赤字は5623億円を超え、2024年度の赤字額は6578億円となる見込みである。すでに後期高齢者医療制度への支援金などが重しになっており、健康保険財政は悪化している。新たに子育て支援金の負担が加わると、保険料負担の余力を失っていく。これは事実上の「増税」であるが、子ども支援金は医療の保険料ではなく、いわば窓口負担と同じで、「国民負担率」には含まれないという奇妙な正当化がなされている。
加えて、先述したように、職業別年齢別に分立した公的医療保険制度ごとに、大きく負担率が異なっている。子ども支援金の負担金は2026年度から徴収を開始し、2028年度に満額に達するが、2028年度の被保険者1人当たり月額保険料は、中小企業の従業員らの協会けんぽでは700円、大企業の社員らからなる組合健保では平均850円、公務員の共済組合では950円、75歳以上の後期高齢者医療制度では350円、自営業者らの国民健康保険では1世帯当たり600円とばらつきが大きい。
少なくとも同じ年収で保険料が一律になっておらず、非常に不合理である。しかも「1人当たり保険料負担」には保険の対象になる赤ちゃんも含まれているのである。まっとうな税源から賄うのが筋だろう。
第2の目玉は、高等教育費の負担軽減策である。具体的には、2024年度に、①授業料等減免と返済の必要のない給付型奨学金を子ども3人以上の多子世帯や私立理工農系の学生等の中間層へ対象を拡大する、②大学院修士段階における授業料後払い制度を創設する、③貸与型奨学金における毎月の返還額について減額制度の年収要件等を柔軟化するといった内容である。2025年度から多子世帯の学生等について、所得制限なく、国が定める一定額まで大学等の授業料・入学金を無償とする。