「健康被害を与えてしまったことは事実で、厳しい処分も覚悟しています」

10階店舗で食べた客に発症者は確認されていないが、土用の丑の日の大量販売のため、10階店舗で下処理したうなぎが地下1階に持ち込まれて売られていたことが分かり、保健所は25日から10階と地下1階の両方に連日立ち入り検査を実施。

発症者5人から黄色ブドウ球菌を検出したため29日午後4時半すぎに営業禁止処分を出し、百貨店と伊勢定は同日夜に記者会見を開き問題を発表した。

「京急百貨店の金子新司社長は『この度は誠に申し訳ございませんでした』と頭を下げ、非を認めています。

質疑の中で、店のマニュアルでは弁当を盛りつける際に手袋を着用することが決められていたのに、当日は『手袋使用はしてなかったと報告を受けている』と伊勢定の取締役が説明しました。手袋の不使用が原因かどうかは分かっていませんが、24、25両日に普段とは違う衛生管理上の手抜きがなかったかが原因究明の焦点になっています。

また、販売したうちの450個には消費期限の誤表示やアレルゲンの表示漏れがあったことも百貨店と伊勢定は認めました」(社会部記者)

10階店舗
10階店舗

会見翌日の30日、10階店舗では伊勢定関係者が沈痛な表情で取材に応じた。「きょうも保健所の立ち入り検査は続いています。私どもはその結果を受け指導に従わなければならないので、衛生管理態勢も含め会見で発表した以外のことは言えないことを理解してください」と述べ、詳しい説明を拒んだ。

ただ、責任を感じていることも強調し「今は店舗の再開よりもまずはお客様への対応が大事です。このような不祥事を過去に起こしたことはなく、今回のことは真摯に受け止めています。亡くなった方がおられ、大勢の方に健康被害を与えてしまったことは事実で、厳しい処分も覚悟しています」と話した。

今回多くの人を苦しめた原因の黄色ブドウ球菌は、ヒトの手指の切り傷や鼻の中、のどなどに普段から居着いている「常在菌」だ。

「代表的な食中毒菌で、手指が触れるおにぎりなどの食品で食中毒を起こす危険が知られてきました。一定の温度や湿度があると増殖し、その際に毒素を出します。やっかいなことに一度この毒素が出てしまうと加熱しても毒素が死滅しないのです」と、横浜市健康安全課の担当者は話す。

店舗HPより
店舗HPより

このため、食中毒を防ぐには「顔や髪に触れた手で食材を触らないようにして菌をまず食品につけないことと、食品を10度以下の冷蔵庫に入れるなどして菌を増やさないよう意識することが重要です。手に傷がある人は食品に触れないようにする必要があるほか、マスクや手袋の着用も有効です」とこの担当者は注意を呼び掛けている。