6月から漬物の販売には「アレ」が必須に

地元で獲れた野菜を使い、その土地で受け継がれた製法、味付けで作られる農家の漬物は、ふるさとの味として地域住民はもちろん、観光客からの人気も高い。

基本的に農家の多くは、自宅の作業場やキッチンで仕込んだものをそのまま道の駅や直売所などで販売していたのだが、今年6月からは改正食品衛生法による厳格な基準に沿った製造施設を整備しなければならないという。

「2021年の食品衛生法改正により、漬物を製造するためには国から正式に営業許可を取得しなければいけなくなっています。ただ、急に厳格に施行されたこともあり、猶予期間が設けられていたんです。法改正後3年間は経過措置として営業許可がなくても販売できていたのですが、その猶予が5月末で終わるため、今後どんどん手作りの漬物はなくなっていくと予想されます」(松平氏、以下同)

6月以降、農家が手作りした漬物は消えていく可能性が高い…。写真はイメージです
6月以降、農家が手作りした漬物は消えていく可能性が高い…。写真はイメージです
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漬物の販売は法改正前まで、各自治体に届を提出さえしていれば製造・販売できる届け出制だったそうだ。

「しかし、法改正によって国際的な衛生管理手法である『HACCP(ハサップ)』に基づいた営業専用の調理場の設置、ハンドル式の手洗い用の水道の設置禁止、温度計付きの冷蔵庫の設置などの条件をクリアしなければ、漬物を販売できなくなったのです。

そのため、国際水準に対応した漬物製造専用の調理場を用意しなければいけないのですが、そうなると設備投資で数百万円規模も必要になるケースが多い。農家は高齢の方々が多いこともあり、多額の設備投資を行えないため泣く泣く漬物製造をやめるしかない状況となってしまっている農家が、たくさん出てきているんです」

写真はイメージです
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農家のなかには、副収入として漬物を加工して販売しているところもある。漬物が貴重な収入源だった農家の人々にとっては、法改正による打撃は小さくはないだろう。

そして、手作りの漬物が売り場から姿を消すことは、食の多様性の喪失にもつながると指摘する声も少なくない。ふるさとの味が姿を消せば、ローカルな食文化は衰退していき、食の単一化をもたらす可能性があるのだ。

なお漬物のほかにも、法改正で消えてしまう可能性がある食品もあるんだとか。

「法改正で新設された業種である水産製品製造業の対象食品です。これは魚介類、もしくは水産動物、魚卵などを惣菜として加工した食品のことで、かまぼこ、ちくわ、干物、明太子などが該当します。水産製品製造業は、すでに事業化して作業場を設けているところもあるので、漬物ほど姿を消すことはないかと思われますが、個人で作っている惣菜などはなくなってしまう可能性もあるでしょう」