「天啓が降りてくるんです。『こっちの方が早いよ』って」

――とにもかくにも、その練習が大変そうです。美少女さんも、結構な時間を費やしたのでは?

RTA in Japan(※)への出場が決まった当時はコンビニの夜勤をしていたのですが、あまりお客さんが来ない店舗だったので、空き時間にひたすらカービィボウルをプレイしていました。家に帰ってからも含めると、1日だいたい8〜10時間はやっていましたね。

同じRTAをやっている人がほとんどいないので、攻略方法を全部自分で組まないといけない。全218ホール分の動きの最適化が、とても大変でした。

(※)オンラインとオフラインのハイブリッドで行われる国内最大級のRTAイベント

自作のチャート(攻略手順)がまとめられた手書きの研究ノート。「ごく秘」とあるが、今回、特別に中身を見せてもらえた。
自作のチャート(攻略手順)がまとめられた手書きの研究ノート。「ごく秘」とあるが、今回、特別に中身を見せてもらえた。
理想的な進行から失敗時の挽回方法まで、詳細に書かれた研究ノート。「Excelで管理するほうが簡単なのですが、218ホール分の手順は手書きでないと覚えられないので、実際に書いています」
 
理想的な進行から失敗時の挽回方法まで、詳細に書かれた研究ノート。「Excelで管理するほうが簡単なのですが、218ホール分の手順は手書きでないと覚えられないので、実際に書いています」
 

練習を繰り返していると、だんだん頭の中でカービィボウルのステージを再現できるようになるんです。

次第に、プレイしている時間より、頭の中でシミュレーションをする時間が増えていって。

早そうな攻略方法もね、気づくとか、思いつくとかではなくて、天啓が降りてくるんです。「こっちの方が早いよ」って。実際にプレイして検証してみると、本当に早い。

――相当やりこまれているからこそ、ですね

カービィがどういう動きをするのか、しっかり把握できているからというのもあると思います。カービィボウルでは時折、カービィが謎の挙動をしてしまうんです。突然、上空に吹き飛んだり、バンパーにぶつかって加速したり。

ただ、内部の物理演算はきちんと設定されているので、条件さえ合わせれば不思議な挙動もちゃんと再現できます。再現ができるなら、その仕様を解明して防ぐこともできる。RTAにおいて、想定外の挙動はミスにつながりますから、徹底してミスをつぶしていくんですね。

練習中におかしな動きをした際は、原因究明のため、2時間かけて1フレームずつ録画を検証することもありました。

カービィボウルの仕様については有志がwikiをまとめてネット上に公開しているものもあるのですが、それとは別に、私が見つけた仕様もあるんですよ。カービィボウルの知識なら、日本で2番目に詳しい自信があります。とくにフレーム周りについては研究者があまりいなかったこともあり……

――発見者「俺」というやつですね。内容のほうは、おそらく専門的かと思いますので別の機会にお伺いできれば……

「パワーメーターはフレーム毎に1上昇しますが、見た目のパワーメーターは2フレームに1上昇しています。これはパワーメーターが32ドットで構成されているためで、本来であればパワー15とパワー16は見た目で判別できません。しかし、パワーメーターの横でカービィが萎む演出があり、こちらが8フレームに1段階ずつ縮小していくことが研究で明らかになりました。パワーが15のとき(画像左)と16のとき(画像右)では、パワーメーターの見た目は同じなのにカービィのサイズが違うことが画像からわかると思います。発見者は私です」
「パワーメーターはフレーム毎に1上昇しますが、見た目のパワーメーターは2フレームに1上昇しています。これはパワーメーターが32ドットで構成されているためで、本来であればパワー15とパワー16は見た目で判別できません。しかし、パワーメーターの横でカービィが萎む演出があり、こちらが8フレームに1段階ずつ縮小していくことが研究で明らかになりました。パワーが15のとき(画像左)と16のとき(画像右)では、パワーメーターの見た目は同じなのにカービィのサイズが違うことが画像からわかると思います。発見者は私です」
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