母乳は飲ませるほど出やすくなる
初乳(出産後10日くらいまでの母乳)には、赤ちゃんが必要とする栄養素や免疫物質がたくさん入っています。生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ免疫力が低い状態です。母乳を飲むことで、赤ちゃんの免疫力は強化されます。
赤ちゃんが生まれてから最初の1、2回で出るうんちを「胎便」といいます。黒っぽくて、コールタールのような粘性のある便です。赤ちゃんは、お母さんのおなかにいる間に羊水を飲み込み、腸管を通して羊水をきれいに保っています。腸管にたまった汚れは、生まれてから胎便によって排出されるのです。初乳には胎便の排出を促すような物質も入っています。
初めは母乳も出にくいですし、赤ちゃんの吸う力も強くありません。母乳の出口となる乳首の乳腺をすべて刺激するように、丸く飲ませることが大事で、赤ちゃんの抱き方を工夫して、母乳が出やすいような抱き方をとる必要もあります。おなかが減ってぐずりだしたらすぐに飲ませられるように、いつも赤ちゃんのそばにいる必要もあります。
たしかにお母さんにとって、母乳育児は重労働という側面があります。でも、赤ちゃんに母乳を飲ませれば飲ませるほど、母乳は出やすくなることが多いのです。
私は夜中も、2、3時間おきに母乳を飲ませました。初めは起きるのがつらくて大変でしたが、赤ちゃんが上手に吸えるようになってリズムができると、母乳もどんどん出て、双子でも育てられるような、よく出るおっぱいになりました。
おかげで3人の子どもを、それぞれ1歳半で断乳するまで完全母乳で育てることができました。
母乳は大切な栄養素
0~3歳は、脳の発達にとって最も大事な時期です。母乳にはそのベースを作る大切な栄養素がいっぱい入っているのです。
厚生労働省が行った平成27年度の調査によると、妊娠中に、「ぜひ母乳で育てたいと思った」「母乳が出れば母乳で育てたいと思った」と回答したお母さんは、9割を超えています。
しかし、生後3カ月時点で母乳だけで育てている割合は54.7パーセント。ミルクへの依存が一面であるのも事実です。
今は生まれてすぐからミルクを与える病院も多いため、母乳育児の方法を教えてもらえない、やり方がわからない、と思っているお母さんが多いかもしれません。
いろいろな事情があってミルクに頼らざるをえないお母さんも多いかもしれませんが、母乳育児のよさを、一人でも多くのお母さんにお伝えしていきたいと思います。