同じ沿線の人情商店街
「縁台の似合う街」をうたうこの商店街は、約800mある通りのいたるところにベンチや縁台が設置されている。
商店街の人に話を聞いたところ、ホームセンターで購入したものから近隣の芸術家が作成したもの、商店の人が手作りしたものなど、さまざまな種類を厚意で置いているのだという。
「あそこ(店先)のベンチは商店街の方が作ったやつです。あと、この辺に芸術家の方がいて、その方が作ったものもありますね」(商店のAさん)
手作り縁台はゼブラ柄など個性豊かな塗装で、デザインもなかなか凝っている。ドリンクホルダーに使えそうな穴や、遊びに使えそうなマス目を描いたものなどがあり、ゆっくりと過ごすことを推奨するかのようだ。
店舗によっては、テラス席の前にも縁台を置いているほか、複数人で座れる長い縁台、テーブルと椅子を並べた場所まである。
その環境は、人を排除することを目的にした意地悪ベンチとは真逆。深川資料館通り商店街では、食べ歩きや散策中に気軽に休憩し、来た人が長時間過ごせるような工夫が施されている。
この利用者思いに溢れた優しい商店街の人々は、昨今の意地悪ベンチについて何を感じるのか。実際に話を聞いたところ、その回答からも優しさがにじみ出ていた。
「ウチの前に置いているのは、手作りじゃなくホームセンターで購入したやつですね。(意地悪ベンチは)事情は分かるんだけど……世知辛い世の中ですね」(商店のBさん)
「私も縁台を置いている取り組みは好きなの。まぁここは下町だからね! みんな優しいのよ」(商店のCさん)
溜まり場のほか、路上飲酒やホームレス対策など、さまざまな観点から広まっている意地悪ベンチだが、これによって今度は地べたに座る人が増えるなど、別の問題も噴出している。
いっそのこと、深川資料館通り商店街のように座る場所を提供した方が、治安や景観は守られるのかもしれない……。
取材・文・撮影/集英社オンライン編集部