「銀行決済や通販、切符の予約などのアプリも凍結」
逮捕状が出ている董容疑者らが国外にいることが確実なため、警察庁は今後、国際手配を行う公算が高いが、日本と中国の間には犯罪人引渡条約がないため、中国当局が身柄を拘束し日本に送ることは考えにくい。
董容疑者らはこれを知った上で、ピンポンダッシュのように来日して落書きし、すぐに帰った可能性もある。だが中国政府の思惑は、“迷惑系”が考えるほど単純ではない。
「中国外務省の毛寧報道官は6月3日の会見でこの事件に絡み、『靖国神社は日本軍国主義が発動した対外侵略戦争の精神的道具とシンボルだ』と、中国政府の公式見解を強調した上で、『外国にいる中国国民が現地の法律や法規を遵守し、理性的に要求を表現するよう改めて注意する』と発言しています。
董容疑者が“理性的”な表現を行わず中国国家に恥をかかせたとみていることを示しており、中国当局は同じ行動をとる人物が現れないよう、董容疑者らに非公式の“懲罰”を加えることは確実だと受け止められました」(外報部記者)
そして、懲罰はすでに始まっているとの情報もある。
「毛報道官の発言の後、董容疑者のSNSアカウントが再び凍結され、董容疑者が運営会社に抗議に行った場面だとする動画がSNSで回っています。彼が同じ行動をできないよう動画サイトへのアクセスが遮断されることは当然考えられますが、すでにIT大国となっている中国ではもっと恐ろしい“懲罰”があります。
それは、銀行決済や通販、切符の予約など、中国での生活で不可欠となった『微信(ウィチャット)』や『支付宝(アリペイ)』などのアプリのアカウントが凍結されることです。これらが使えなければまともに生きていくことはできません。
実は中国では政権に批判的だとの疑いを持たれた人物がこれらのアプリの使用制限を受けることは既に起きています。国家のイメージに泥を塗ったと外務省に認定されるような人物なので同じ措置が取られてもおかしくないですね」(中国駐在経験者)
日本社会では今後、鉄頭の引き渡しが実現できないことへの怒りの声が上がるかもしれない。だが、鉄頭のこれからの人生は、日本での懲役暮らしとは比較にならない過酷なものになったり、二度と消息を聞くことが出来なくなったりするかもしれない。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班