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公開を直前に親族への誹謗中傷が悪化し、公開中止寸前に

1998年7月、和歌山市内の住宅地の夏祭り会場で、猛毒のヒ素が混入したカレーを食べた67人が中毒を発症し、そのうち4人が死亡する事件が起きた。

事件現場近くに住む主婦・林眞須美が容疑者として浮上、林の自宅前には連日大勢のマスコミが張り込み、加熱した報道合戦が繰り広げられた。事件を知らない若い世代でも、林眞須美が報道陣にホースで水を撒く映像を記憶しているものは多いだろう。

誰しもが記憶に残っているこの事件を検証する事件を追ったドキュメンタリー映画、本作の中では、林眞須美死刑囚の夫・健治氏や林夫妻の長男さんが、なぜ母の無実を信じるに至ったのかを打ち明けているが、公開を直前に親族への誹謗中傷が悪化し、公開中止寸前のところまでいった。

記事の掲載を前にして上映が危ぶまれる事態となり、動向を見守っていたが、二村真弘監督から緊急コメントを受け取り、以下、全文を掲載する。

映画の公開まであと3週間ほどに迫るなかで、映画に登場する林眞須美さんのご親族から、誹謗中傷や嫌がらせを予想以上に受けているとの相談がありました。私たちとしても注意深く準備してきたつもりでしたが、想定が不十分だったのかもしれません。一方、映画の内容についての責任はすべて私たち制作側にあるにも関わらず、公開前から攻撃の矛先がご親族に向いてしまったことは残念でなりません。

当初、取材を受けた際にはこの映画と事件についてより重層的に知ってもらうための背景や、映画で描き切れなかったディテールについても話しました。しかし、林眞須美さんのご親族への誹謗中傷が増加する中で、誠に心苦しくはありますが、取材していただいた皆さんに緊急事態へのご対応をお願いしました。もちろん、映画を媒介として、賛否に関わらず、建設的で意義のある議論ができることを望んでいます。
(『マミー』監督・二村真弘より)