「“女風礼賛”のような作品にはしたくない」
――前作とは違い今作は主人公が性に積極的なのが印象的でした。登場人物がどのようなスタンスで女風の仕事と向き合っているか、気をつけていらっしゃることはありますか?
ヤチナツ 前作を出した時は女性用風俗がまだそんなに一般的ではなかったので、主人公が性風俗に対して知識がないほうが共感を得やすいのでは?という編集さんの意見を取り入れましたが、前作の好評を受けての2作目だったので、既に女性用風俗を知っていて、かつ偏見が少ない主人公にしました。
さらに私自身が取材を重ねたこと、今回は友人をモデルにしていることもあって、女風という仕事に対してよりフラットに描けたかなと思っています。
――そもそも女風を知ったきっかけは何だったのでしょう?
ヤチナツ 私、情報番組「5時に夢中!」が大好きで。番組内で女風について扱っていたのがきっかけです。そのときは「へぇ、そんなサービスがあるんだ」くらいにしか思っていなかったんですが。
ちなみに、私は「5時に夢中!」に出演している新潮社・出版部執行役員の中瀬ゆかりさんのファンで、「中瀬さんがいる会社から依頼が来た!」と、すごくうれしくて制作スケジュールを無理矢理作ったことを覚えています(笑)。
――取材を重ねるにつれて、女風に対する印象が変わりましたか?
ヤチナツ もともと特別な印象を抱いていたわけではないのですが、どんどん悪くなっているかもしれません……。
――それはなぜでしょう?
ヤチナツ 知れば知るほど、「私が関わってこなかった世界だな」と思ってしまうというか……。
たとえば、X(旧Twitter)で取材用の専用アカウントを作ったんですが、界隈の人たちを見ていると、私が前作で描いたキャラクターと違う人たちがいっぱいいて。
もちろんそれはXで頻繁につぶやいている方々なのでその人たちが平均的な女風ユーザーかと言われるとちょっと違うのかもしれませんが…。
だからXはもちろん、取材を重ねていろいろなユーザーの話を聞き、リアルに近づけられるように描いています。100%想像ではなく、モデルがいたり取材で聞いたことをもとにしたり、自分の主観は混ぜずにフラットに描くことは意識しています。
伊東 編集側としても、“女風礼賛”のような作品にはしたくないと思っています。手放しで「女風は素晴らしいんですよ!」と褒めてしまうと、PR漫画のような嘘臭さが出てしまいますし、単純に面白くならない。女風の良い部分も悪い部分もしっかり落とし込む、ということを意識しています。
ヤチナツ 漫画でも描いていますが、実際にストーカーの被害に遭ってしまうセラピストがいたり、女風にハマりすぎて苦しんでしまう利用者がいたりするんですと。なので、そういった“闇”の部分もできるだけ除外せずに描ければと思っています。
漫画/ヤチナツ
取材・文/毛内達大
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