北朝鮮の核実験決行はロシアにとっても都合よし

昨年9月にはプーチン氏はロシア極東の宇宙基地で金正恩氏と会談し、ロケットの開発現場を自ら案内している。

「これも弾道ミサイル発射技術を使ったすべての飛翔体の打ち上げを北朝鮮に禁じている安保理決議に公然と挑戦する振る舞いです。

さらに今年3月には、北朝鮮の密貿易を監視する国連組織の任期を延長する決議案を、拒否権を行使してつぶし、監視体制を解体させました。もはや北朝鮮への貿易制裁は有名無実化しています」(同デスク)

プーチン氏は朝鮮労働党機関紙「労働新聞」が18日に掲載した寄稿文で、ロ朝が「西側の統制を受けない貿易と決済のシステムを発展させ、一方的で非合法な措置に共同で対処していく」とも表明。経済分野での制裁離脱を事実上公言した。

最後に残る、金正恩氏が喉から手が出るほどほしいものが「核実験に反対しない」との言質だ。

朝鮮人民軍が5月30日に行った超大型放射砲の発射(朝鮮中央テレビより)
朝鮮人民軍が5月30日に行った超大型放射砲の発射(朝鮮中央テレビより)
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「プーチン氏はウクライナ侵攻でたびたび核をちらつかせてきましたが、実際には使えないことを西側に見透かされ“オオカミ少年状態”になっています。ここで北朝鮮が核実験をすれば世界に核の恐怖を思い出させ、有利な状況がうまれると期待している可能性があります。

さらにもうひとつ、11月の米大統領選を前に核実験が行われればバイデン米政権の北東アジア政策の失敗ということになり、トランプは『俺が大統領になればこんなことにはならない』と言い立てるでしょう。

ロシアはバイデンには早く退場してもらいたいと思っており、これも悪くはない状況になります。このため金正恩氏は、核実験に踏み切っても国連安保理での制裁の動きをロシアが拒否権を行使して確実に葬ってくれることを期待しています」(外交筋)

中国は依然として核実験に強硬に反対しているが、北朝鮮は中国との関係悪化を招いてもロシアとの友好強化で補えると判断すれば、中国の言うことに耳を傾けなくなるとの見方が強い。日米韓に加え、中国も、ロシアと北朝鮮の動きを止められない事態がすでに現実のものになっている。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班